からめる小指  ~愛し合う思い~
「…………………あのね……………バイトに…………」

「はぁ!?」

冷静にいようと思っていたが………

突拍子もない返事に、怖い声が出る。

ビクッとする二人。

俺の反応が思った以上に悪かったせいか

樹が逆に穏やかになった。

「遥、バイトってどういうこと?
別に学校が禁止してる訳じゃないけど……
まずいと思ってなかったら、俺達に相談したよね?
やましい所で働いてる?」

「……違う!………………違います。
ウチの叔母さんの本屋を手伝ってるの。」

はぁ~っ、本屋かぁ。

樹が『やましい所』なんて言うから、変な想像をしてしまった。

本屋の手伝いなら………

まぁ、それほど怒らなくてもいいか。

ホッとする俺をチラリと見て

「だったら、どうして内緒にしたの。」

おぉ、そうだった。

俺は、こういう駆け引きは苦手だ。

これが国語教師と数学教師の差かもしれない。

「………………………コッソリお金を貯めて
プレゼントを買いたかったの……………。」

「いつも大切にしてくれる先生達に…………
自分たちが、頑張ったお金で買いたいねって……………。」

これには俺も樹も、面くらい…………ニヤケてしまう。

俺達のためか………。

そりゃあ、俺達に相談出来ないよなぁ。

甘い!と言われそうだが………

もうスッカリ許している。

樹を見ると……………同じようだ。
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