からめる小指  ~愛し合う思い~
「尋、おいで。」

流石に怖がらせ過ぎたせいか、呼んでも直ぐには来ない。

「尋………………。」

もう一度呼ぶと、観念したのか近づいてきた。

隣に座ろうとする彼女に

「こっち。」と言って、膝の間を指す。

もう怒ってないし、機嫌も良いのだが………

可愛いから、もう少しこの状態を楽しむ。

はぁ~っ。

わざと大きなため息を吐くと

ビクッとして、上目使いに見る。

写真が撮りたい表情だが……今は我慢だ。

「ちょっと、おいたが過ぎますねぇ~
俺達が心配することくらい、頭の良い千尋ちゃんだったら………
想像がつくと思うんだけど?
こんな時間に、高校生二人が帰ってたら
変な男の餌食にされるよ?
初めては先生が良いって言ったのは、ウソだったんだぁ」

「ううん、違うよ。
先生が良いって思ってる。
二人だし、叔母さんのお店で……おまけに本屋さんだから大丈夫かな?って。
私達の考えが甘かったの…………ごめんなさい。
あのね、ホントに先生達に心配をかけるって………
気づかなかったの。
今ならバカだなって思うけど
先生達が喜んでくれるかな?ってことしか考えてなくて………。
大学が決まって、ちょっと浮かれてたのかも。
みんな、バイトしたりデートをしてるって言ってて………。
先生達が忙しいから………今ならみんなと同じ事してみようかな?って
軽い気持ちで……………。
ウソまでついて、先生達の信用も失って……………」

そう言うと泣き始めた。

ちょっとお灸が過ぎたか?

「…………分かった、もういいよ。
反省してるみたいだし。
でも、尋達が思うほど世の中はキレイじゃないんだよ。
過保護にするつもりはないけど、危ないことは沢山ある。
ちょっと羽目を外したつもりでも、大変な事に巻き込まれるってことも。
遅くなれば、電車に乗る酔っぱらいも増えるし
夜道には、変な男が潜んでいる事もある。
女の子だから、心配なんだ。
これは、彼氏としてだけじゃなくて……
教師としても注意してるからね。
みんなと同じようにバイトをしても良いけど………
もう少し時間を考えて欲しい。
せめて、俺か樹が帰る時間には帰っておいて。」

「うん。」と何度も頷く。
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