発つ者記憶に残らず【完】


"あなたの存在が発覚してしまったのがちょうど津田沼くんのときで、それまで私達、それぞれ時間差で転生してたの。ゴードンは黙っててくれてたんだけど、バレちゃってね。ゴードンも同じ罪を背負うことになってしまったから、もしかしたらあなたももう一生、転生できないかもしれない。監視役のゴードンがいなくなっちゃって、いったん魂が戻るところが無くなってしまって…えっと、説明が難しいわね、もう!"

いきなり怒り出して少しだけ笑った。なんだか可愛らしい人だな、この人。

"その話はいったん置いておきましょう。それで、なんで私がもう転生できなくなったかと言うと、2人で転生してたわけだからカウント数が2倍になってしまってズルになったからなの。あの姿見が光る回数がカウント数になるから当然なんだけど…"

そんなの知らなかったよ!と思った。あと、察するにあの堕天使がゴードンらしい。あのメモは遺言なのかな、とふと思った。もう消えてしまうディアンヌがマリアという私をゴードンに見守ってくれるようにするための。

あの堕天使が私の目を通して記録を書いていたことは知っていたから、彼がちゃんと見られるかわからないけど私がそのメモを読むことでもう会えないゴードンに伝えたかったのかもしれない。

できることなら私のことを見守ってほしい、と。

"でもたぶん、あなたはきっと健全に転生できるはずよ。それぐらいの罰を私が受け持ったわけだし、あなたが罪を侵したわけじゃないから。それで、私が一体何者でどんな罪を侵したかというと…"

そこが一番知りたかった!とドキドキしながら次のページをめくったけど私は愕然としてページから指を離してしまった。開いていたページは他のページの重さに耐えられずひとりでに手帳がパタンと閉じて見えなくなった。

そこから先のページは、私の知らない言語だった。

< 15 / 96 >

この作品をシェア

pagetop