発つ者記憶に残らず【完】
は?と思って我にかえりパラパラとページをめくったけど、それ以降はやっぱり知らない言語が延々と続いていて諦めかけて、また日本語に戻っているページが現れてホッと胸をなでおろした。でも肝心な部分がわからなくてこれを書いた人を恨めしく思った。
"ディアンヌはこのお城…というか、この国の王女なの。でも安心して?ちゃんとしたお姫様にしなかったからテーブルマナーも覚えてないしダンスも踊れないし全然笑わない可愛げのない王女っていう設定にしてあげたから、何も知らないあなたが何かしたところで変に思われることはないわ"
ああ、そうですか、そりゃどうも、と複雑な心境になった。
"この国はマドロス王国っていって、結構横暴な国なの。平気で戦争を吹っかけるような国だけど城の中は意外と平和だから安心してね"
この部屋のインテリアを見る限りそれは嘘じゃないんだろうな、と思う。
"年は16歳で、赤い髪はお母さん譲り。でもそのお母さんは妾だったからあなたはあまりいい地位にはいないんだけど、赤い髪は珍しいから王様には可愛がられてる。お母さんはすでに亡くなってて、私はお世話になったけどあなたはなってないからそこだけ話が合わないかもしれない。だからもしお母さんの話になったら上手くはぐらかして"
はぐらかすのはたぶん、得意だと思う。今回は記憶が残ってるし。
その後は兄弟のこととかで凄く細かく書かれていていったん私は寝ようと思って着替えてベッドに潜り込んだ。お風呂は明日の朝にすればいい…