桜の舞い散る頃
ご飯も食べ終わったし、室長の様子を見に行かなきゃ。リビングのテーブルから体温計を持ち、寝室のドアを軽くノックする。
「‥‥失礼しまーす。」
小声で声を掛け、ベッドに近づく。ちょっと苦しそうだけど、寝れているみたい。
「室長、お熱計らせて下さいね。」
掛け布団を少し捲って、パジャマの中に体温計を入れ、脇の下に挟む。少しでも下がっていれば良いのだけれど‥‥。ピピ ピピ 室長を起こさないように、あわてて取り出す。
「37.9℃」
あまり変わらないか。寝室を出て、洗面所に行き、洗面器にタオルを入れ、水に浸して軽く絞る。腕にタオルを掛け、洗面器を持って寝室に戻る。
「室長、少し冷たいですよ。我慢して下さいね。」
声を掛けて濡れたタオルを、室長の首の横に当てる。左右交互に冷やしながら、時々、洗面器の水を取り替えてくる。
「室長、水分を取りましょう。」
彼を少し起き上がらせ、頭を支えてスポーツドリンクを飲ませる。朝までに、少しでも楽になって欲しい、熱さえ下がってくれれば、そんな思いだけで、首筋のタオルを取り替え、飲み物を飲ませ、朝方まで繰り返した。
ふぅ~。さすがに徹夜が、きつく感じるお年頃だわ。そろそろ熱を計っておこうかな。
「室長、お熱計らせ下さいね。」
小さな声で囁いて、体温計を脇の下に挟んだ。
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