短編集 【善人のフリした悪人】
「お爺さんお爺さん。
川で珍しい物を拾いましたよ。」
「どれどれ。」
「こちらです。」
「おお・・これは書物で読んだことがある。
確か“桃”と呼ばれる果物じゃ。」
「“桃”・・でございますか?」
「これは・・・鬼ヶ島で育つ実だよ。」
自分達を苦しめている"鬼”に繋がる言葉が出て、少しだけ2人は気落ちしてしまいましたが、
気を取り直してお婆さんが台所から包丁を持ってきます。
「せっかくだから食べましょう。」
お婆さんは桃の先端に切り込みを入れます。
・・・その時でした。
「オギャー!オギャー!」
中から出てきた赤子に、
お爺さんとお婆さんは大変驚きました。
「これはこれは婆さんやい。
桃から赤ちゃんが出てきた。」
「あ~ありがたやありがたや。
神様が私達に授けてくださったのでしょうねお爺さん。」