短編集 【善人のフリした悪人】
「では・・・私の本当の父と母は・・!?」
「この村に・・昔“茂吉”と“京香”という2人の夫婦がおった。
茂吉と京香は夫婦で漁師をしておってな・・。
鬼の被害で食べ物が無くなったワシら村人達の為に、
毎日のように漁へ出て魚を捕り、
ワシらに分け隔てなく魚を恵んでくれていた。
京香は出産直後も・・赤子を抱いて茂吉と夫婦漁へ出かけてくれていたよ・・・。
まさにワシらにとって・・命の恩人のような2人じゃった。」
「・・・・・・・。」
「ある日・・・茂吉と京香は仲間達と漁に出たきり帰ってこなかった・・。
ワシらは何日も何日も海辺で火を起こし、
海へ向かって皆の名を叫び続けた・・・。
全員海難事故に遭ってしまったのかと諦め掛けていた頃じゃった。
一緒に海へ出た茂吉の漁師仲間がボロボロになった船と共に帰ってきた。
・・そして教えてくれたよ・・。
鬼ヶ島から・・石轍の襲撃を受けたと・・。
“自分達を逃がすために、茂吉と京香の船が盾になってくれた”と・・。」
「・・・その・・茂吉殿と京香様が・・
私の父上と母上なのですか・・?」
桃太郎はお爺さんの話を聞きながら涙を流していました。
お爺さんもその時を思い出したのか・・涙を流します。