短編集 【善人のフリした悪人】
「おい。みんな行ったら海の見張りがいなくなるべ?」
「構うもんかよ!
あんな珍しい鳥の方が先だ!」
「・・・ったくしょうがないべ。
じゃあ俺達だけでも残るか?」
一通り飯を食い終わったら、人間の漁船がいないか見張る予定だった鬼が数匹、その場に留まりました。
「じゃあもう1杯どうっすか?」
「おう悪いね。
これ飲んだら見張りに戻るか・・・・
って誰だお前!?!?!?!?」
鬼が思わず“ブフーッ”と飲んでいた酒を吐き出しました。
「ん~!!
うまいっすね牛の肉!」
構わず、宴会場に現れた1匹の猿が、次々にそこにあった食物を口の中に放り込みます。
「おのれどこから現れたかこの猿め!!
それは俺達の飯だ!!!」
「勝手に食うなこの野郎!!」
「・・・あ、お邪魔でした?
・・逃げろ!!!」
猿が一目散に逃げ出すと、先程の鳥騒動で残った鬼達も全員、猿を追いかけ始めました。