短編集 【善人のフリした悪人】
「おめぇも・・ワシら鬼に襲われたのか・・・。」
紫鬼は目の前で息絶えた人間の姿に、一粒の涙を流しました。
なぜ自分達は人間をこんなにも迫害するのか。
なぜ鬼は人間と共存しようとしないのか。
そんな事を考えながら、
他の鬼に見つかる前に、動かなくなった人間を砂浜に埋葬してあげようと、
ゆっくりその体を持ち上げようとした・・その時でした。
「オギャー オギャー」
死んだ人間の女が大事そうに抱えていた布地の袋から、泣き声が聞こえてきました。
驚いた紫鬼がその中を覗くと・・
「人間の赤子・・。
この女の子供か・・・。」
紫鬼は母親の死体を埋葬した後、
泣きつかれてスヤスヤと眠る赤子を家に連れて帰ることにしました。
一体なんの為にそうするのか、
この赤子をどうするつもりなのか、
紫鬼自身、答えを見出だせないまま、
本能赴くままに赤子を連れ帰ったのでした。