短編集 【善人のフリした悪人】
慌てて豪鬼様のお屋敷へ向かった紫鬼が見たのは、
まさに人間の手によって豪鬼様が死ぬ瞬間でした。
驚きながらも紫鬼は、
本能でこう思いました。
“これで・・・良かったのかもしれない・・・”
人間を支配し続け、
慈悲も無く彼らを殺し、奪い、
自分はなぜ鬼に生まれてしまったのか、
なぜ鬼は人間との共存を選ばないのか、
鬼ヶ島に住む鬼の中で唯一匹、
平和を願っていた紫鬼にとって、
鬼が人間に倒される歴史を受け入れる事は簡単な事でした。
「あの人間を生み出し、ここへ呼んだのは他の誰でも無い、ワシら鬼だ。
・・・・・・・ワシも潔く殺されよう。」
紫鬼は自分の家へ戻り、
人間達が来るのを待ちました。