短編集 【善人のフリした悪人】


―――――― 


襖が開けられ、紫鬼の視界には、

1人の人間、
見たことのない鮮やかな羽の鳥。
鋭い牙を持つ犬が映りました。



「我が名は桃太郎。

貴様ら鬼を滅ぼす為、
この地にやって来た。

お前が最後の1匹だ。」


人間が自分に向けて刀を突き立てても、

全てを覚悟した紫鬼に恐怖はありませんでした。



「・・・・命乞いはしないさ。

ワシら鬼が・・迷惑かけたなぁ・・・。

・・・すまんかったなぁ・・・・。」



「・・・謝ったところで済む話では無い。

地獄でずっと、天国にいる我々人間達に向かって手を合わせることだ。」



「・・・死ぬ前に・・聞いてもよいか?」



「・・・なんだ?」



「なぜお主は、“桃太郎”という名なのだ?

なぜ鬼ヶ島にしか無い“桃”の名が使われているのだ?」



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