短編集 【善人のフリした悪人】
「そういえば昨日の豪鬼の親分のあれ見たか?」
「おお見た見た。
あんな遠くにあった船を一発で仕留めるなんてさすが豪鬼の親分だ。」
「ウヒャヒャヒャ。乗ってた人間共も間違いなく溺死だなありゃ。」
「今度俺達も真似してみようぜ!」
赤鬼と青鬼が交わす会話を背中で聞きながら、
豪鬼様が狩りをするかの如く、
人間が乗る船目掛けて石轍を投げ、
撃ち抜いたこと。
その結果、漂流したあげく、
あの女と赤子が鬼ヶ島の外れの浜辺に打ち上げられたことを知った紫鬼は、
空に向かって他の鬼に聞かれないように
「すまん」と呟きました。