短編集 【善人のフリした悪人】
「ちったぁ楽しめたか?」
「・・・・うん。」
「・・・・しょーがねぇなぁ。」
女が再び目に溜めた涙を見たムサシは、
ポケットに手を突っ込んである物を取りだした。
「ほれ。」
「・・・・?」
ポンとそれを投げると、
女が両手で受け止める。
「なにこれ・・?」
「お前みたいな大人には公式プレゼントを贈れないから、俺の私物やるよ。」
この夜に映える、鮮やかな飾りをつけた手のひらサイズの箱だった。