短編集 【善人のフリした悪人】
トムが最初に向かったのは、
街の郊外にある孤児院。
親に捨てられた多くの子供達がこの施設で生活をしている。
新人時代から48年、トムはこの施設で暮らす子供達に毎年プレゼントを届けていた。
1年に1度、
12月24日にしか会えない子供達。
1つ1つ、枕元にプレゼントを置きながらトムはその成長を見守っていた。
親に捨てられた哀しみ、
自分が生まれた意義を見いだせない苦しさ、
“さんたさん
おとうさんとおかあさんをください”
そう願う子供も決して少なくなかった。