ハイド・アンド・シーク
彼に同情しながらも、誰がいいかなと考えてすぐに一人のひとが頭に思い浮かんだ。
でも─────
「……経験値が低いんだよな」
「え?誰のこと?」
適任者がいるの?と目を輝かせた松村に、でもね、と返す。
「たしかまだ四年目で、そんなに経験を積んでないんだ」
「文章力は?素直?忍耐力は?」
「全部クリアしてる、と思う」
「じゃあその人がいい」
「田中さんが納得するかな」
「するさ。自分じゃないなら誰だっていいって言うに決まってる」
要するに、もう田中さんと松村たちの関係は完全に破綻しているわけだ。
これはもしかしたら、一戦交えた可能性も無きにしも非ずだな。
そう思ったら、ますます彼女を推したくなった。
「でも頑張り屋さんだから、加減できなくて頑張りすぎる傾向にあるんだよな」
「それは有沢がうまく助言してやれよ」
「いいの?広報部との仕事に俺が口挟んでも」
─────いや、でも彼女が俺を頼ってリリース原稿の相談なんかしてこないとは思うが。
松村の方は、大歓迎だよと微笑んだ。
「じゃあ、もしも彼女が困っているようなら少し手を貸すことにする。それでもいい?ちゃんと成長できるように育てたくて」
俺がそう尋ねると、彼は何度もうなずいてくれた。
それなら早速、田中さんと彼女の両者にうまく話をしていかないといけないな、と頭を巡らせていると。
松村が「その人の名前は?」と聞いてきた。
「森村さんっていう人」
「了解。………………有沢のお気に入り?」
「なっ……!違うよ!」
違……わないか。
口では否定したけど、たぶん、違わない。
思いがけないことを言われて焦った俺を見て、松村はたいそう楽しそうにケラケラと笑っていた。見抜かれてる感じがして、ちょっとまずいなと思ったのだった。