ハイド・アンド・シーク


すると、どこから話を聞きつけたのか幹事をやっていた越智さんが私たちの間に割って入ってきた。その手には大きなビールジョッキ。中は空っぽ。


「森村さんって今フリーなの!?」

「え!?」


私より先に茜とカゲちゃんが声を上げた。
私はそれよりも、越智さんが無理やり入ってきたことによってテーブルの上のお皿がズレてこぼれてしまったことに気を取られていた。

せっせとこぼれた料理を布巾で拭いていると、越智さんが赤い顔をして私の顔を覗き込んできた。


「森村さん!聞いてますか!」

「え?なんでしょうか?」

「今フリーなんですか!?」

「あー、まぁ、はい」


答えた瞬間、さっきまでそばにいた茜とカゲちゃんが違う席へ移動していくのがハッキリ見えた。
こらーーー!置いていくなーーー!
とはもちろん言えない。

とりあえず話を逸らそうと彼のグラスを指さして、「何か頼みますか?」と笑いかける。
追加でまたビールを頼んだ越智さんは短く整えられた髪の毛を左手でぐちゃぐちゃと掻いたあと、明らかにお酒で据わったらしい目をこちらへ向けた。


「ずーっといいなって思ってたから。フリーならどうでしょう、俺は!?」

「……お酒飲みすぎてますよ」

「いえ!俺は酔ってません!」


私たちの会話を聞いて、先輩方がクスクスと笑っているのが聞こえて恥ずかしくなった。
酔っ払いに絡まれる私。これほど悲惨なことはない。


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