ハイド・アンド・シーク


徳田さんにずっと隣を占領されている有沢主任は、こんな時でも優しく彼女の熱弁に相槌を打ってあげているのが見える。
ビールを飲みながら、時折彼女に何か食べたらとお皿を差し出している。

……いいなぁ、私も隣にいたいなぁ。

と、思ったりもしたけれど。
それはきっとこれから先も無理なんだろうと気付かされる。
私はすでに彼に告白済みで、この打ち上げのあと正式に振られるのだから。

そう考えたら一気に気分が沈んできて、飲み会を楽しむ気持ちにはなれなかった。


「森村さん、斉木さん!お疲れ様です!私……ついにやりましたよ!」

後輩の営業部のカゲちゃんが、やや興奮気味に私たちの元へやって来た。その目はキラキラしていて、なんだかやたらと輝いて見える。

何があったのかと茜がすぐに私の腕を引っ張り、席を移動する。

「カゲちゃん……、まさか?」

「はい!おかげさまで!」

「おお!あのイケメンの彼とついに!?」

茜がカゲちゃんを盛り立てる。
この流れで行くと、もしかして彼女が好きだと言っていた取引先の営業マンとうまくいったのか!?
私も茜も期待に満ちた目でカゲちゃんを見つめる。

「連絡先交換できました!プライベートな方の!」

「……なんだぁ〜!それだけかー!!」

おそらく茜は「お付き合い」まで持っていけたのだと思っていたのだろう。
予想が外れてずっこけていたけれど、このリアクションも酔っ払いならではだ。

私はカゲちゃんに、「良かったね」と祝福の言葉をかけた。

来週末にデートの約束まで取り付けたというのだから抜け目がない。案外、カゲちゃんは恋愛においてはやり手かもしれない。


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