ハイド・アンド・シーク


─────と、その時だった。

『ピンポーン』

場違いな、明るい電子音が部屋に響いて私たちは動きを止めた。

こんな遅い時間に、誰がなんの用で?
ピンポンダッシュ……じゃないよね?

私の上に覆いかぶさっていた主任も身体を起こし、視線を宙にさ迷わせて誰が来たのかと警戒している。

「あの……、誰かお客さんが来る予定になってたとか?」

「ううん、誰も」

私の問いかけに首を振った彼は、ベッドから降りた。
その間にも、何回かピンポーン、ピンポーン、と鳴っている。

すると、外から複数の笑い声が聞こえた。

私と主任は顔を見合わせる。
私の方は、完全に恐怖心いっぱいの顔。彼の方は、誰が来たのか察した顔。


「居留守つかっても、たぶんバレてるな」

頭をくしゃくしゃとかいた彼は、悪趣味なやつらめ、とつぶやいて寝室を出て玄関へ向かったようだった。


誰かが来るのに心当たりがあったということ?
複数いるのだから、元カノとかそんな存在ではないようだけど。

いそいそとはだけたブラウスを直していると、玄関の方から主任の声、そして訪問者たちの声が聞こえた。

< 87 / 117 >

この作品をシェア

pagetop