ハイド・アンド・シーク
「お持ち帰りの現場を確認させていただきました!」
「インターホンのタイミングどうだった?ばっちり?」
「部屋に入らせてよー、彼女の顔を拝ませてくれー」
「……頼むから酔っ払いは帰って」
最後の冷静なのが主任の声。
客人たちは男女数人らしく、楽しげな笑い声が時おり混じる。
「だっていっつも仕事仕事って俺らの誘い断るじゃん。結婚式用のDVDだってメッセージ撮れてないんだよ?忘れてただろ?」
「だからって押しかけなくても」
「たまたま!そのへんで飲んでたからさ!たまたまね!」
「待ち伏せとか本当に趣味悪いよ。やめてくれる?」
─────あぁ、そうか。事態を飲み込めた。
そういえば前に私が会社で残業していた時に、主任宛に電話が来て大学時代のお友達と話していたのを思い出した。
きっと、彼らはその人たちだ。
彼のアパートの場所も知ってるって話していたし。
合点がいった。
「ちょっと待ってて」という声とともに、主任が私の元へ戻ってきた。
私はというと、ついさっきと同じベッドの位置に座り、違うのは服をちゃんと着なおしたというところくらい。
おそらくぽかんとしたような顔で彼を見つめていることだろう。
「森村さん、ほんっとーにごめん。少し出てくる」
「あ、はい」
「もし良かったらシャワー浴びたり、冷蔵庫のもの適当に食べたり飲んだりしてて。タオルも洗面所にあるの使っていいよ。テレビ見ててもいいし。自分の家のように、好きなように」
「…………はい」
そんなに私のことを信用してるのか、と嬉しさで笑いがこみ上げそうになるのを耐える。
ついさっきまで、求め合ってた二人とは思えない冷静な会話。
それがまたおかしくてたまらなかった。