キスからはじまる


「そのやけどのせいで、明るかった瑠美は大人しくなって、人前に出ることを嫌がるようになった…。そのときに、俺は瑠美のそばにいようって決めたんだ…」


「…っ」


世良くんと瑠美さんには、そんな事情があったんだ……。


わたしがふたりのあいだに入ることなんて、とうていできやしないと思った……。


「瑠美のお願いは、なんでも聞くって決めた。わがままでも、なんでも。だから、付き合ってほしいって言われたときも、迷わず受け入れた」


「…」


「でもそれは…恋愛じゃなかった。…償いなんだ。瑠美は俺のことを好きでいてくれているけど、俺にとって瑠美は、彼女じゃなくて、家族なんだ…」


家族としての“好き”と、恋人としての“好き”。


世良くんはそういうことが言いたいのかもしれないと思った。


「瑠美のことを好きになろうと努力したけど、いつだって償いのほうが優先して…。こんなこと言ったら最低だと思うけど…すごく息苦しいときも、あった……」


「世良くん…」


世良くんは瑠美さんにやけどを負わせてしまったその日から、ずっと後悔して…瑠美さんを優先して生きてきたんだ…。


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