キスからはじまる


ペンケースを鞄にしまい、ささくさと教室を出た。


階段をゆっくりとおりる。


スマホで時間を確認すると、あと10分で、わたしが乗りたい電車が発車することに気がついた。


急がなきゃ。


ゆっくりと階段をおりていた足を速めた。


なぜなら、それを逃したら次の電車は30分後だからだ。


寒いなか駅のホームで30分待つなんて、やだよ。


さらに速くかけおりた。


そして、その勢いのまま、最後の二段を、ウサギみたいにぴょんっ!と飛び越えたんだ。


それが間違いだった。


いつもみたいにスローペースな自分でいれば、よかったのに。


すぐ横から、こちらに曲がってきた人物が、そこにはいたんだ。


「ッ!?」


わたしの二本の足が着地する場所は、その人物が塞いでいた。


だから、どうしようもなかったんだ。


宙に舞っているわたしは、その人物に、覆い被さった──。


どさ──


角を曲がったらいきなり二段上からふってきた人間を抱き止めるなんて、なんの構えもしていなかったその人はできるわけなく、まるでわたしに押し倒されたかのように、後ろへとなだれていった──。

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