キスからはじまる
「胡春、手伝えなくてごめんね!!」
放課後になり、メグちゃんはいつもより早く帰る支度をした。
今日はダイくんとデートで、クリスマスぶりに会うらしい。
「ううん、田中くんがいるから大丈夫!楽しんできてね!」
メグちゃんとダイくんがラブラブなのを見ると、やっぱり少し、うらやましい気持ちになる。
わたしにもはやく……素敵な人が現れるといいな。
帰る支度を終えたけれど、わたしは帰らない。というか、帰れない。
日直の仕事があるのだ。しかも今日は、資料室の整理を任されてしまった。
新学期早々、ついてないよ。すぐ終わるらしいけどさ…。
教室を見渡すけれど、同じ日直の田中くんがいない。
先に資料室に向かったのかも。それなら、わたしもはやく行かなきゃ。
そう思って急いで教室をあとにした。
たしか、2階の第1資料室だったよね。
わたしたちの教室がある校舎ではなく、南側の校舎。資料室に入ったことないし、こっちの校舎は授業でたまにしか来ることないから、一瞬どこかわからなくなった。
まだまだ冬真っ最中で寒いのに、ひとけが少ないから余計に寒く感じるし。
さっさと終わらせてはやく帰ろっと。
第1資料室の文字を見つけ、寒さから逃げるように中へと入った。
がらがらっばたんっ
少し乱暴だったかも。
でも、はやく中に入りたかったんだもん。
田中くんはやっぱり、すでに来て──
「……っ」
……息が、止まるかと思った。
だって……田中くんだと思ったその後ろ姿は、
間違いなく、世良くんだから。