キスからはじまる
自信持って“納得してくれた”って言わないってことは、世良くんが一方的に別れたことにしてるんだ。
それなのに“別れた”なんて報告されても……困るよ。
世良くんは、わたしがもっと困ることを告げた。
「……俺と西埜は…」
最初、絞り出すような声で。
「俺と西埜は…もう、終わったの?」
静かに……悲しげに、問いかけてきた。
心臓がぎゅうっと握られた気がきた。
目頭が熱くなる。
だけどぐっと堪えて、唇をゆっくりと開けた。
「……っ……わたしと世良くんは…なにも、はじまってなんかないよ……」
そう思わないとだめなの。
思い出しちゃだめなの。
世良くんの優しさなんて。
世良くんの唇の温もりなんて──。