キスからはじまる


自信持って“納得してくれた”って言わないってことは、世良くんが一方的に別れたことにしてるんだ。


それなのに“別れた”なんて報告されても……困るよ。


世良くんは、わたしがもっと困ることを告げた。


「……俺と西埜は…」


最初、絞り出すような声で。


「俺と西埜は…もう、終わったの?」


静かに……悲しげに、問いかけてきた。


心臓がぎゅうっと握られた気がきた。


目頭が熱くなる。


だけどぐっと堪えて、唇をゆっくりと開けた。


「……っ……わたしと世良くんは…なにも、はじまってなんかないよ……」


そう思わないとだめなの。


思い出しちゃだめなの。


世良くんの優しさなんて。


世良くんの唇の温もりなんて──。

< 114 / 125 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop