キスからはじまる


「どうして………っ」


「……」


「どうして言うの………。わたしが……っなんのために……」


なんのためにサヨナラしたか、わかってるの……?


うれしい。


ほんとはすごくうれしい…。


やっぱり、両思いだったんだ……。


わたしと世良くんのあいだには、繋がってるものがちゃんとあったんだ──。


「…西埜が正しいって、あのときは思ったよ。瑠美のそばにいるべきだ…って。でも……」


また……一歩近づいて。わたしはもう、逃げられなくなった。


「…全然、消えないんだ…。西埜のことが、頭から離れないんだ……」


わたしの体を挟んで……そのなかで、苦しげにつぶやいた。


まさか、そんなふうに思っていたなんて……。


胸がきゅうっと締め付けられた。


「……西埜」


世良くんは少し、腰をかがめて。


「西埜の気持ち、聞かせて……」


このときはじめて、彼と瞳を合わせてしまった。


そうしたらもう、抑えきれなくなる。


その瞳に吸い込まれてしまいたいと願ってしまう。


その瞳にうつるのが、わたしだけでありたいと願ってしまう──


「好き……。

わたしも世良くんが好きです……っ」


やっと……やっと言葉にすることができた──。

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