キスからはじまる
キス12


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ニシノさんへ


いきなりの手紙で、驚かせてしまってごめんなさい。


わたしは匠の幼なじみの、川野瑠美といいます。


はじめまして、ではないね。


クリスマスイヴの夜に、一目見たことがあるよね。


あのときは、正直すごくショックでした。


匠に裏切られたと思って、悲しくていたたまれなくなって逃げ出してしまいました。


あのとき匠はわたしのもとへ来てくれて謝ってくれたけど、正月があけたころに、あなたのことが好きだから別れてほしいと言われました。


わたしは匠のことが好きだから、それを受け入れませんでした。


匠がわたしことを本当に心から好きなわけではなく、償いで付き合ってくれていることは分かっていました。


ずっと優しい匠に甘えてた…。


このままじゃいけないと思いました。


匠には一番、幸せになってほしいから。


わたしは半年前から、皮膚科でレーザー治療を受けています。大学の友達が、すすめてくれました。


現在の状態が、同封している写真です。


これ、すっぴんなんだよ。やけどの跡、まったくわからないでしょう?


今朝、最後の受診を終えてきました。

だから、今この手紙を書いています。


せめて跡が完全に消えるまでは、匠にそばにいてほしいと思ったんです。それまでは、甘えてもいいと思ったんです。


だから、もうイヴの日から1ヶ月以上も経ってしまい、遅くなってごめんなさい。


イヴの夜、並んでるふたりを見て、悔しいくらいに、お似合いだと思いました。


それに、匠が好きになる子だから、すごくいい子なんだろうな。


匠をよろしくお願いします。


これを読んだニシノさんが、笑顔になってくれることを願っています。


川野瑠美

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