キスからはじまる
「……ぐす……っ……」
「……胡春?え、泣いてるの……?」
手紙を読み終えるころ、わたしの瞳からは雫がこぼれ落ちた。
「なんて書いてあったの……?」
世良くんは心配そうに尋ねてくる。
世良くんはまだこの手紙を読んでいない。
わたしが泣いているのを見て、なにか責めるようなことが書かれているのかと想像したのかもしれない。
わたしはあわてて訂正した。
「……瑠美さんの気持ちに胸がいっぱいになって……っ」
「……?」
世良くんに手紙をわたす。彼もゆっくりとその文章を読み始めた。
そして彼もまた、涙を流した。
「……瑠美に感謝しないといけないな…」
「そうだね…」
2月に入った最初の土曜日。今朝、世良くんの家に一通の手紙が入った。
その中にはまた、手紙が入っていて……“ニシノさんへ”と書かれていたから、世良くんは読まずに、わたしに連絡をくれたのだ。
そして世良くんの家にやってきて、手紙を読み始めたのだ。