キスからはじまる
キス13
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「るみ。おれがずっとそばにいるからね」
そう言ったのに…約束守らなくて、ごめん。瑠美。
高校を卒業して、大学のためにこの街を引っ越した瑠美。
だけど俺たちの関係は変わらず付き合っていた。
だから高校に入って何度か告白を受けたけれど、当然、すべて断った。
この先きっとだれに告白されたって、俺は瑠美のそばから離れないって、本気でそう思ってた。
その気持ちが、償いのためだとしても…。
──まさか、自分のほうから、好きになるなんて。
事故で、一瞬だけクラスの女の子と唇と唇が触れた。
俺からすればたったそれだけのことなのに、その子はりんごみたいに顔を真っ赤にして去っていった。
…なにあれ…。
今まで告白してきた子たちも、真っ赤な顔してたけど…
そのときはじめて、瑠美以外に可愛いという感情を持った。
それが胡春だった。
あの顔がまた見たいと思った。
また、あの子にキスしたいと思った。
気づいたら……胡春のことを好きになってた。
胡春以外、キスしたくないと思った。
俺と胡春のことを受け入れて、送り出してくれた瑠美には本当に感謝している。
俺も瑠美には、一番に幸せになってほしい。
ただ…俺が幸せにしてあげたいのは、胡春なんだ。
「…あのさ、」
春休みに入ってしまう前に、俺は胡春の親友である吉田に聞きたいことがある。
いつもメグちゃんメグちゃんと胡春はよく吉田の話をしてくれる。
仲がよすぎて少し妬けてしまうほどだ。
教室に胡春がいない隙に、俺は吉田に話しかけた。
「なに?」
吉田は胡春とちがってクールな印象だ。
「胡春って今、なにがほしいとか言ってなかった?」
4月10日は胡春の誕生日。
その日は日曜日だから、デートをしようと思う。
プレゼントになにをあげようか考えたけれど、もしなにかほしいものがあるなら、とひとまず吉田に聞いてみることにした。
クールだと思っていた吉田の顔が、少しだけにやりとした。
そして教えてくれた。
「…胡春のほしいものはわからないけど、胡春は──」
胡春には夢があるらしい。
それは…
チューリップ畑の真ん中で、恋人とキスをすること。
なんて胡春らしいんだ。なんて可愛らしいんだ。
しかも、まだ叶えられていない夢。
俺が叶えてあげたい。
そのあと俺はさっそくチューリップ畑がある場所を調べた。
俺は今まで、3つ年上の瑠美に合わせて少し大人ぶっていた気がする。
……俺、こんなウキウキして、全然子どもだな。
そんな自分も悪くないと思った。
胡春の誕生日が、今から楽しみだ。
きっとすごく喜んでくれる。
プレゼントもはやく探さないと。
──俺はこの先、胡春のためならなんだってやれる気がした。
end