キスからはじまる
「西埜ー、」
名前を呼ばれ、席をたつ。
教卓に立っている先生から、数学のテストを返却してもらう。
ほかの人に点数が見えないように受け取り、自分の席へと戻る。
答案用紙をゆっくりと開く。
──64点。
お…!?
意外にとれてる…!!
ほっと胸を撫で下ろした。
60点ないかと思ってたよ…。
先月末に行われた、2学期、中間テスト。
これで全部のテストが返ってきた。
全教科、悪くもなく良くもない点数。
期末テストは、もうちょっとがんばらないとな。
11月。
すぐ隣の少しだけ空いている窓の隙間から吹き抜けた風が、
わたしの答案用紙をカサカサゆらした。
うう、寒い。
思わず身震いした。
先生が換気にうるさいから少し開けているけど、一番窓側はふりだよぉ。
わたしはこっそりと窓をしめ、誤答を赤ペンで訂正しはじめた。