キスからはじまる
「ん…」
うっすらと瞳を開いたとき、寝起きのせいで頭はまだぼーっとしているけれど、体がとても軽いことに気がついた。
ゆっくりと上半身を起こす。
カーテンの向こうで人の気配を感じる。
きっと先生だ。
今、何時なんだろう。
ベッドからおりてローファーに足を通した。
軽く布団を整えてから、ゆっくりとカーテンを開いた。
だが、カーテンの外に出ようとした足が止まった。
なぜなら……先生だと思い込んでいたその人物は、ジャージ姿の世良くんだったから──。
びっくりして頭が一気に覚めた。
しまった、て思った。
カーテンを開けなければよかった。
ソファーに腰かけている世良くんがこちらを見て、視線が交わった。
わたしは足が動かなくなった。
先に口を開いたのは彼のほうだった。
「体調、わるいの?」
わたしは朝ちゃんと教室で授業を受けていたから、わたしが体調不良なことを知っているのはメグちゃんしかいなかった。
「朝から微熱で…」
呟いたわたしだけど、ここからどう動こうか迷った。
今すぐカーテンをしめてベッドに戻るわけにはいかない。
かといって世良くんが座っているソファにも座れない。
立ちっぱなしでいるしかなかった。