キスからはじまる
時計を見ると、あと15分で体育の授業が終わる時間だった。
「熱、下がった?」
「た、たぶん…」
嘘だった。
カーテンを開ける前までは、だいぶ下がったかなと思っていた。
だけど、今はそうは思わない。
世良くんの姿を見て、全身に一気に血液がまわったからだ。
体が熱い。
だけど、まだ顔には出ていないからセーフだ。
「世良くん、は…」
どうしてここにいるの?
言葉が出なかった。
自分だけがあのことを意識していて、恥ずかしい。
できるだけ気にしていないような素振りをつとめた。
「これ」
世良くんはそう言ってわたしのほうからは見えなかった右ひじを見せた。
「押されてこけた」
ひどくすったような跡。
男子はグラウンドでハンドボールをするといっていた。
ハンドボールって、すごく激しいもんね。
「痛そう…。絆創膏、貼らないの?」
砂や血液は水で流したようだけど、うっすらと血液と透明の液体がにじんでいる。
「…西埜、貼ってくれる?」
「えっ!?」
とんでもないことを言われたかのように声が裏返った。
これじゃあ、意識してるのバレバレだよ…。