キスからはじまる


「え?」


世良くんはポーカーフェイスのまま聞き返した。


「えっと…なんでもない、忘れてっ」


慌てて言った。


自分から聞くなんて、恥ずかしい…。


きっとなにが言いたかったのかバレてる。


言わなきゃよかった…。


「どうしてわたしに?」


世良くんはわたしの言葉をはっきりと復唱した。


まるで“続きを言え”と言うように。


その続きはわたしは分かるし、世良くんもまた、分かっている。

わたしと世良くんふたりだけの秘密、のよう。


でも、実際そのとおりだ。


わたしはだれにもあのことを言っていないし、きっと彼も同様。


メグちゃんに相談できたらどんなにいいだろうと思ったけど、やっぱり言うのをためらった。


世良くんにキスされたなんて…。


わたしは意を決して口を開いた。


「どうしてわたしに……スしたの?」


はっきり“キス”とは言えなかった。


その単語を発することが、恥ずかしかった。

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