キスからはじまる
「どうしてだと思う?」
世良くんを見ると、彼はポーカーフェイスのままだけど、瞳が少し黒く光っている気がした。
「え…っ」
そんな、聞き返さないでほしい。
理由なんてわかるわけないよ…。
もしかして世良くんは…わたしのことが、スキ?
そう考えた夜もあった。
だけどそれは絶対ちがう。
世良くんがわたしをスキなんてそんなことあるわけない。
今まで一度も接点がなく、そんな素振りもなかったんだから。
ということは…。
「ストレス…」
わたしは一番当たってそうな答えを口にした。
「ストレス軽減…」
世良くんはあのとき“おわび”といった。
おわびということは、あのキスは世良くんにとって利益になるものということになる。
“わたしにキス”ということではなく、“キス”ということだけに視点を置いたら…。
“キス”をするとストレス軽減するとテレビでいっていた。
それがもっとも有力だとわたしは考えたのだ。