キスからはじまる
「おもしろかったね~っ!」
「すっかり騙されたー!」
次の日、土曜日。
わたしはメグちゃんとパスタを食べに行ったあと、映画館へと足を運んだ。
“このアイ、絶対みんなダマサレル”というコンセプトのミステリーラブストーリー。
最後のどんでん返しが予想外で、わたしもメグちゃんもまんまと騙されてしまった。
こんな物語、いったいどうやったら思い付くんだろう~!
作者の頭の中が見てみたいよっ!
「ねえ、新作のフラペチーノ飲みにいかない?」
「あ、飲みたいの思ってたー!!」
映画館をあとにしたわたしたちは、メグちゃんの提案で某有名カフェに行くことに。
「…ねえメグちゃん」
「んー?」
「…キス…ってさ、スキな人とするものだよね?」
「ぶっ」
わたしの質問に、メグちゃんは飲んでいるラズベリーフラペチーノを吹き出した。
わたしはそばにおいてあるナプキンを急いで差し出した。
「ごほ…っあ、ありがとう」
「ご、ごめんね。いきなり変なこと聞いちゃって」
「ううん。胡春からそういう話聞いたことなかったから、ちょっとびっくりしただけ」
そうなのだ。わたしは今まで彼氏がいたことがなくて、高校に入ってからスキな人もできていない。中学のときは片思いしてる人がいたけど、遠くで見ているだけだった。今ではあれはどちらかというと憧れのようなものだった気さえしている。