キスからはじまる
「えー、それでは!第5回!クラス会を始めたいと思いまーす!!」
委員長の橋本くんがソフトドリンク片手に大きな声でうながす。
「最近は寒すぎて布団から出たくない人も多いと思うけど~、冬休みまで残り1ヶ月とちょっと、乗り切ろう!乾杯ー!!」
それを合図に、「乾杯~っ!」とこのクラス35人がそれぞれグラスをカチカチと合わせる。
まるでサラリーマンの忘年会みたいで笑っちゃう。
これで5回目のクラス会だなんて、うちのクラス、ほんとに仲がいい。
すごく楽しそうな平和なクラスでいいねって周りのクラスから言われるくらいだもん。
メグちゃんがいるのはもちろんだし、ほんと、このクラスの一員でよかったなぁ。
「胡春、それ焼けてるよっ」
メグちゃんがわたしに近いお肉を指してくれた。
「あ、うん!」
トングでお肉をお皿にのっけて、お箸に持ちかえて、タレをくぐらせて、白米と一緒にパクリ!
「ん~!おいしい~!!」
お腹ペコペコだったから、もう、染み渡るよっ!
「世良ー!そこのメニュー表とって!」
ふいに聞こえてきたその名前に、わたしは思わずむせそうになった。
「メニュー表ってこれ?」
「その隣のやつ!」
「はい、」
「さんきゅー!」
まわりはガヤガヤとうるさいのに、世良くんと他の男子の会話に、つい耳をすませてしまった。
今日、世良くんは出席している。
世良くんは学校で基本一人でいるけれど、決してぼっち感はない。
それに、話しかけるとふつうに会話をしてくれるから、むしろ話したいと思っているクラスメイトは男女ともいると思う。
ほら、今だって。
ここぞとばかりに世良くんのまわりにクラスメイトがたかっている。
基本ポーカーフェイスだけど、たまに笑みを浮かべる世良くんの表情に、女の子たちは目をハートにしちゃってる。
やっぱり世良くんはモテるなあ。