キスからはじまる


「…それは、世良本人に聞いたほうがいいんじゃない?」


クラス会の次の日、わたしはメグちゃんに焼肉屋を出てからあったことを相談した。


すると返ってきたのはこんな言葉で。


「…メグちゃんは、どうしてかわかるの?」


まるでわかっているかのような言い草だった。


「まあおそらく…」


「おそらく…?」


メグちゃんの顔は少しにやにやしている気がする。


「なーいしょ。間違ってたらいけないし、やっぱり本人にききな?」


「ええ~っ」


そこまで言っといて!?


気になるよお…。


考えてもまったくわからない。


喜怒哀楽で言えば“怒”ってかんじのキスだった。


わたし、世良くんを怒らすことなんてしてないはずなのに…。


だから余計気になってしょうがないよ。


「…なんか、松木がかわいそうになってくるわ」


「えっ?」


メグちゃんがなにかつぶやいたけど、よく聞き取れなかった。


「なんて言ったの?」


「なんでもないよ、胡春の気持ち次第だからね~」


「う、うん…?」


わたしの気持ち…?


わたしの今の気持ちは、まず世良くんのあのキスの意味を知りたいっていうことと、あとは松木くんの返事をどうするっていうことだ。


松木くんは返事はいつでもいいって言ってくれた。


だから、世良くんのキスの意味を知ってからでもいいはず。


あの“怒”のようなキスで世良くんがストレス軽減できるわけないし…。


あ、もしかして、ストレスがたまりすぎて、八つ当たり?のような意味のキスだったのかな…?


そんなにストレスたまってるなら、どうにかしてあげたい気持ちもある…。


っていっても、そのためにキスしていいって言ってるわけじゃないよ!?


ああもうっ、わたしはさっきから世良くんのことばかり考えてる。


あの事故キスがなかったら、わたしと世良くんは、今もなにひとつ接点のないクラスメイトだったかもしれない──。

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