キスからはじまる
「べ、勉強禁止なの…っ?」
驚きすぎて、今のわたしにはそれくらいしか言葉にできなかった。
だってクラス会の日以来、世良くんとは目さえ合っていなかったんだから。
「知らなかったの?学校案内のときに言ってたでしょ」
「そ、そうだっけ…?」
そんなのすっかり忘れてた。
というか、世良くんがやってきたことにほんとにびっくり。
世良くんは放課後にも、ここで本を読んでいたの?
と、とにかく、勉強が禁止なら、はやくここから去らなきゃ。
そう思って片付けていると。
その片付けている教科書、ノート、ペンケースがかっさられてしまった。
それをかっさらったのはわたしでないのはたしかで、わたしでなければ彼しかいなくて。
彼はわたしのものを奪ったまま図書委員が入るカウンターのなかに入って、その奥にある扉を開けた。
“入って”というふうに目で合図される。
わたしはえ…?と思いながらも、まずはカウンター、そして扉の中へと入った。
彼もわたしに続いて中へと入ってきて、扉を閉めた。
「ここって…」
「図書準備室」
わたしのつぶやきに、答えをくれた。
本が入っているのか、山積みになった段ボールがいくつか端に並んでいる。
長机とパイプイスが2つあって、本のカタログのようなものや、なにかのリストファイルや、予算・決算の書類が置いてあった。
世良くんはそれらを端にやって、スペースができたそこに奪ったわたしの物を並べた。
「ここで勉強するといいよ」
さも当たり前かのようにそう言う。