キスからはじまる


「このあと机の中身移動させておくように!それじゃあ、今日はこれで終わり」


先生がそう言って、放課となった。


わたしは机の中に常に辞書を置いているため、それを移動させなければならない。


チラっ…と世良くんのほうを見た。


って、世良くん、もういない!!


たった今からわたしの席となった、元世良くんの席に、彼の姿はすでになかった。


世良くんはどうやら移動させるものがないようだ。


机の中は常に空にしてる人みたいだ。


なんだか少し残念。


世良くんはきっと気づいてないだろう。


わたしと席が入れ替わりなこと。


そう考えながら辞書を持って4の席に移動する。


ついさっきまで、世良くんが座っていた場所…。


きっとこれも、わたしだけが、意識してること。


きっと冬休みに入ってしまえば、わたしと世良くんの今の妙な関係なんて、0に戻ってしまうんだろうな──。


「………え」


わたしは思わず声が漏れてしまった。


辞書を机にいれるときに、目に入った文字。


机の上に、小さく書かれている、綺麗な文字。


『来週の月曜日、忘れないでね』


……こ、これって……。


瞬間、心臓がバクバク波を打ってきた。

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