キスからはじまる
自意識過剰、かもしれない。
だけど。だけど。
『再来週の月曜日、また、ここにおいでよ』
世良くんの言葉を、思い出す。
きっと、いや、間違いなく、この机のメッセージは、わたしに向けて、だ──。
……っ……。
世良くん、こんなの、反則だよ……。
どうしよう、頬が、緩む。緩んでいるのが、自分でも、わかる。
月曜日、楽しみっ。
もう、楽しみすぎる。
わたしはそのあと、ずっとるんるん気分だった。
はやく月曜日にならないかな、なんて考えて、その日は眠りについた。
だけど、目が覚めた次の日、とあることが起こった──。
いつも通り登校して、昨日席替えしたばかりの席について。
世良くんのメッセージはまだ消していないため、それを見てまたうれしくなって。
間違えて昨日までの席に座ってしまったようで慌てている男子の声が聞こえてきて、こっそり笑いそうになって。
教科書とノートを机の中に詰めようとした──そのとき。
カサッ
机の中に、小さな紙が入っていることに気がついた。
四つおりされている。
なんだろう、これ…。
昨日辞書を入れるときは、こんなものなかったのに。
紙をひらくと、それは可愛らしいうすピンクの便箋だった。
黒のボールペンで綴られた、女の子の文字──。
『世良匠くんへ
今日の放課後、体育館裏に来てほしいです。
待ってます。
1-C 仲井リカ』
「ッ!!」
飛び込んできた文字に、わたしは反射的に便箋…いや、手紙を机の中に放り込んだ。