キスからはじまる
「じゃあ、気をつけて帰るように」
教壇に立っていた先生が、教室を去っていった。
──放課後に、なってしまった。
「…胡春、もしかして、体調わるいの?」
カバンを肩にかけたメグちゃんが目の前に立っていた。
「う、ううん、大丈夫だよ」
あわてて顔をシャキッとさせた。
「そう?ならいいけど…」
「メグちゃん、今からダイくんとデートでしょ?行ってらっしゃい!」
わたしの言葉に、メグちゃんは照れたように笑って。
「行ってくる!胡春、また明日ね」
「うん、ばいばいっ」
教室を去るメグちゃんに笑顔で手をふった。
メグちゃんも、もちろん笑顔。
今からダイくんに会えるから、乙女の笑顔になっていた。
可愛いなあ。
…………今わたしはこうやって、ゆっくりしている暇は、ほんとは、ない。
世良くんは──もう、教室には、いない。
メグちゃんより少し前に、帰っていってしまった。
わたしも荷物をまとめた。
机の奥にしまっていた手紙を手にとった。
この手紙が今ここにあることは、あってはならなかった。
わたし……最低だ………。
大きなため息をついた。