キスからはじまる


「胡春、よかったね。ふつうに話せたじゃん」


すでにお弁当を広げてわたしを待っていたメグちゃんに、こっそりというように言われた。


わたしはほっとした面持ちで大きくうなずいた。


松木くん、ふつうに話しかけてくれた。


そして、わたしも変な態度になってなかったと思う。


メグちゃんには、松木くんのことと、世良くんのことを昨日電話で聞いてもらった。


松木くん、なにも変わらず接してくれて、ほんとにいい人だよ…。


絶対幸せになってほしい。


わたしが思ってもあれかもしれないけれど、そう思わずにはいられなかった。


「…胡春さん、さっきから顔が緩みっぱなしですけど」


お弁当を食べ終わろうとしているメグちゃんに、若干あきれ顔でそう言われた。


わたしはハッと我に返り、顔に力を入れた。


「そ、そんなに緩んでたっ?」


「うん。それはそれは。放課後が楽しみで仕方ないって書いてあるよ」


「ええっ」


恥ずかしい…。


世良くんに、ばれてないよね!?


世良くんとはいつもどおり、朝から目さえ合っていないから大丈夫だと思うけど…。


教室でのわたしと世良くんを見たら、わたしたちか妙な関係なことなんて、誰ひとり気づかないと思う。


むしろ、気づかれたくない。


わたしと世良くん、ふたりだけの秘密。


あ、メグちゃんは知ってるけど。


はやく放課後にならないかなあ~っ。

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