キスからはじまる


「…胡春、聞くんだよね?」


「えっ?」


食べ終わったお弁当を片付けていると、メグちゃんはまた声を潜めて言った。


「放課後、あっちの気持ち、聞くんだよね?」


「ええっ!?」


思わず大きな声を出してしまったわたし。


だってだって、“あっちの気持ち”って、“世良くんがわたしのことをどう思っているか”ってこと、だよね!?


「き、聞けないよっ」


そりゃもちろん知りたいけど…わたしが求めてる答えが返ってくる確信なんて、どこにもない。


あきらかにわたしたちは“友達”よりは特別な関係だとは思うけど…だからといってそれが“好き”に結び付くわけではない。


わたしが好きになっただけで、世良くんは恋愛感情を持って接しているのかなんてまったくわからない。


“あっちの気持ち”なんて、確信がないと、聞けないよ…。


「自信持ちなよ、胡春。胡春は、あきらかに他の女子とは違う存在なんだから!胡春のこと家まで送ったり、勉強教えたり…好きとしか思えない」


世良くんに好きと言われたわけじゃないのに、頬が熱くなる。


たしかに、もう少し自信持ってもいいのかも…。


わたしのためにクラス会を6時開始にしてくれたり、仲井さんのもとへ行くのをわたしに委ねたり…、脈あり…なのかな…!?


ああもう、ますます世良くんで頭いっぱいだ。


説明するまでもなく、わたしは午後の授業はまったく集中できなかったのだった。

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