キスからはじまる
待ちに待った放課後がやってきた。
待ちに待ってはいたんだけど、そんなハイテンションでは行けるわけなくて。
むしろ、真逆。
極めて冷静沈着をつとめる。
「世良くん、」
ここが図書室ということもあり、自然と小さくなる声。
勇気を胸にやってきたわたしに、世良くんは少しだけ目を細めて微笑むと、図書準備室の扉を開けてくれた。
この前と同じように、パイプイスに座る。
そして図書委員のはずの彼も、座る。
「わからないところあったら言ってね」
世良くんはそう言って日本史チェックブックをカバンから取り出した。
彼はどうやら赤シートを使って暗記をするみたい。
わたしは英語の問題集と単語帳を開けた。
よし、分かるところからまずやろう!
隣に座っている世良くんに意識しないわけは、なかった。
隣にいるだけなのに、今も油断すると胸がきゅうっと締め付けられそうになる。
だけど、テストも一週間後に控えてるから、今はとにかく勉強!
世良くんの気持ちはもちろん気になるけど、とりあえずテストが終わるまでは、なにも行動は起こさないでおこうと思う。
わたしは目の前に並ぶ英文を頭のなかで読み始めた。