キスからはじまる


「Itseemsthat+S’+V’は…S+seems+to不定詞…?」


おずおずと自信なさげに答えるわたしに、世良くんはくすっと笑みをこぼし、「正解」と言った。


シャーペンが止まっているわたしに、日本史を覚えていた世良くんは「わかる?」と声をかけてくれて、分かりやすく教えてもらっている。


「じゃあ、あとは並び替えるだけだよね」


「う、うん!ええと…」


世良くんが仏に見える。


わたしに教えているあいだにも、ほんとなら暗記できるはずなのに教えてくれて、ほんと優しい…。


わたしにだけ、そうしてほしい。なんて、独占欲が出てしまう。


だって、ただでさえモテるのに、世良くんのこんな優しいところを知ったら、みんな虜になるにちがいないよ。


「それじゃあ、その調子でやってみる?」


「うん!ありがとう」


よーし、この調子で不定詞の問題、マスターしなきゃ!


このあたり、絶対テスト出るもん!!


わたしは授業中よりも集中して問題集をそのあともとき進めた──。

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