キスからはじまる


「…世良、くん?」


問題集をきりのいいところまで解き終わって、一度シャーペンを置いたわたしはうーんと腕を上に伸ばした。


世良くんはというと……腕を枕にして、そこに頭を置いている。顔は、わたしとは反対に向いている。いわゆる、寝ている。


最初は少し休憩するのかな、と問題に集中していたわたしは特に気にしていなかったけど、わたしの呼び掛けに反応がないってことは…眠っているのであろう。


え、ほんとに、寝てるの?


「世良くーん…」


「……」


反応、なし。


これは、寝てますね。


うわー…貴重。めちゃくちゃ貴重。


世良くんが突っ伏して寝ているのなんて、見たことないんだもん。


授業中は真面目に受けているし、休み時間は本読んでいるし。


顔は向こうに向いているから、顔は見えないけど……もうこの体勢だけで、なんか可愛い…。


いつもクールでかっこいいなんともいえないオーラをまとっている世良くん。


寝ているときは、そのオーラもお休みしているみたい。


こんな姿も、学校でわたししか、見たことないのかも…。

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