キスからはじまる



「…髪、伸びたね」


まるで、頭を撫でられているみたい。ドキドキする。髪の毛って、気持ちを許した人じゃないと触ってほしくないものだと思う。わたしもいつかその黒いサラサラの綺麗な髪の毛に、触れてみたい…。


「そ、そろそろ切らなきゃ…」


もうすぐ、肩についちゃう。中途半端な長さは、あまり好みでない。


「切るの?俺、長いほうが、好きだよ」


世良くんの“好き”というワードにドキッとしたのもつかの間、彼はもっとわたしの脈を立てることをした。


わたしの髪の毛を指でするりとすくうと、自分の唇をよせてキスを落とした。


「24日…楽しみにしてるね」


それだけいって、わたしと駅に背を向けた。


脈を立てる、なんてもんじゃない。暴れてる。世良くんは何度わたしをドキドキさせたら気がすむんだろう。


──9回目の、キス。

髪の毛に神経があるみたいに、甘くビリリとした気がした。


わたしの頭のなかはテストを通り越してデートのことでいっぱいになった。


……世良くん。

わたしは……あなたの“特別”と思っても、いいですか?


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