光のもとでⅡ+
「ね、そろそろケーキ食べない?」
「もうそんな時間?」
「うん。七時半」
ツカサはリビングの時計に目をやると、私を支えていた手をゆっくりと離した。
私はソファから下りてキッチンへ向かう。と、そのあとをツカサもついてきた。
「お茶は――デカフェのアップルティーにしようか?」
ツカサは間違えることなくアップルティーの赤い缶を下ろしてくれる。
お茶の準備をしていると、
「ケーキはなんなの?」
言いながら、ツカサが冷蔵庫からケーキボックスを取り出した。
「フルーツタルトだよ」
「なんのフルーツ?」
「シャインマスカット! ツカサはフルーツの甘さなら大丈夫なのでしょう?」
「あぁ……」
「で、カスタードは七倉さんにお願いして甘さ控えめのものにしてもらったの。さらにはこのシロップをかけていただくのだけど、なんだと思う?」
「シロップなんだろ?」
「うん。でも、甘いシロップとはちょっと違うの」
私は箱に付随していたシロップの容器をツカサに手渡し、
「匂い嗅いでみて?」
ツカサは容器の蓋を開け、素直に容器を鼻に近づける。と、
「ローズマリー……?」
「当たり! これをかけて食べるんだって。カスタードやフルーツが多少甘くても、さっぱりと食べられそうでしょう?」
実のところ、七倉さんにケーキをお願いしてから何度となく試作品を食べさせてもらっており、カスタードの甘さもローズマリーシロップのさっぱり威力も把握済みだったりする。
でも、味や香りに対する感受性は人それぞれ。ツカサが食べてどう思うのかまでは把握できない。
そこで、甘いもの苦手つながりの蒼兄ににも試食の協力をお願いしていたのだ。
蒼兄の厳しい意見をクリアした甘さになってはいるけれど、ツカサはどうかな……?
ケーキとお茶の準備をしてダイニングへ行くと、着信音アプリを起動させ、ハッピーバースデートゥーユーのオルゴール曲をかける。
それに合わせて歌を口ずさみ、
「お誕生日おめでとうっ!」
どうぞどうぞとケーキをツカサに差出しキャンドルを消すよう促すと、ツカサは少し恥ずかしそうにキャンドルの火を吹き消した。
パチパチと何度か拍手をして、すぐに室内灯を点ける。そして、あらかじめ用意していたケーキナイフで豪快に半月型にカットした。
直径十センチほどのケーキなので、半分ずつ食べてもさほど大きなケーキという印象はない。
「「いただきます」」
ふたり揃ってフォークを手に取り、まず口にしたのはシャインマスカットだった。
新鮮でジューシーなマスカットはとても糖度の高いもので、いくつでも食べたくなるほど。
「甘いねっ!」
でも、この甘さなら大丈夫だよね?
そんな意味をこめてたずねると、
「あぁ。でも、あとを引く甘さじゃないから食べやすい」
「よかったぁっ!」
ほっとした私は、何度も試作を重ねたタルトケーキを頬張った。
「もうそんな時間?」
「うん。七時半」
ツカサはリビングの時計に目をやると、私を支えていた手をゆっくりと離した。
私はソファから下りてキッチンへ向かう。と、そのあとをツカサもついてきた。
「お茶は――デカフェのアップルティーにしようか?」
ツカサは間違えることなくアップルティーの赤い缶を下ろしてくれる。
お茶の準備をしていると、
「ケーキはなんなの?」
言いながら、ツカサが冷蔵庫からケーキボックスを取り出した。
「フルーツタルトだよ」
「なんのフルーツ?」
「シャインマスカット! ツカサはフルーツの甘さなら大丈夫なのでしょう?」
「あぁ……」
「で、カスタードは七倉さんにお願いして甘さ控えめのものにしてもらったの。さらにはこのシロップをかけていただくのだけど、なんだと思う?」
「シロップなんだろ?」
「うん。でも、甘いシロップとはちょっと違うの」
私は箱に付随していたシロップの容器をツカサに手渡し、
「匂い嗅いでみて?」
ツカサは容器の蓋を開け、素直に容器を鼻に近づける。と、
「ローズマリー……?」
「当たり! これをかけて食べるんだって。カスタードやフルーツが多少甘くても、さっぱりと食べられそうでしょう?」
実のところ、七倉さんにケーキをお願いしてから何度となく試作品を食べさせてもらっており、カスタードの甘さもローズマリーシロップのさっぱり威力も把握済みだったりする。
でも、味や香りに対する感受性は人それぞれ。ツカサが食べてどう思うのかまでは把握できない。
そこで、甘いもの苦手つながりの蒼兄ににも試食の協力をお願いしていたのだ。
蒼兄の厳しい意見をクリアした甘さになってはいるけれど、ツカサはどうかな……?
ケーキとお茶の準備をしてダイニングへ行くと、着信音アプリを起動させ、ハッピーバースデートゥーユーのオルゴール曲をかける。
それに合わせて歌を口ずさみ、
「お誕生日おめでとうっ!」
どうぞどうぞとケーキをツカサに差出しキャンドルを消すよう促すと、ツカサは少し恥ずかしそうにキャンドルの火を吹き消した。
パチパチと何度か拍手をして、すぐに室内灯を点ける。そして、あらかじめ用意していたケーキナイフで豪快に半月型にカットした。
直径十センチほどのケーキなので、半分ずつ食べてもさほど大きなケーキという印象はない。
「「いただきます」」
ふたり揃ってフォークを手に取り、まず口にしたのはシャインマスカットだった。
新鮮でジューシーなマスカットはとても糖度の高いもので、いくつでも食べたくなるほど。
「甘いねっ!」
でも、この甘さなら大丈夫だよね?
そんな意味をこめてたずねると、
「あぁ。でも、あとを引く甘さじゃないから食べやすい」
「よかったぁっ!」
ほっとした私は、何度も試作を重ねたタルトケーキを頬張った。