光のもとでⅡ+
Side 翠葉 02話
受験当日も警護班に送られて短大前へ着いた。
本当は自分で電車とバスを乗り継いで行くつもりだったのだけど、今回の受験で合格できなかった場合、次の受験まで日がないわけで、うっかり公共の乗り物で風邪をもらったら困るから、という理由で警護班に送られることになったのだ。
「ご健闘をお祈りしております」と送り出され、緊張のままに足を踏み出す。
最初に楽典、小論文の試験があり、次が新曲視唱の試験。次が実技試験で、最後に面接という運びだった。
小論文も楽典も問題なくスタートを切れたけれど、新曲視唱では緊張から喉が開かず小さな声でしか歌うことができなかった。でも先生に、「音程とリズム、拍子さえきっちりと取れていればクリアです。声の大きさはあまり気にしないように」と言われていたこともあり、あまり引き摺ることなくピアノの実技試験へシフトできた。
「評価」される場で弾くのは本当に苦手なのだけど、演奏時に試験官が目に入らない程度の距離感があり、先生に「そこら辺にいるギャラリーだと思えばいい」と言わたことを思い出して、そのつもりで弾いたら意外と普段どおりに弾けた気がしなくもない。
自分は表現者――自分が表現したいままに弾く。
それを行ったところ、目立つミスもなく弾ききることができたのだ。
残すところは面接だ。
ある程度、受け答えの練習は仙波先生とも学校の先生ともしてきた。でも、実際に何を訊かれるかは蓋を開けてみなくてはわからない。
今日一番の緊張を伴いながら面接室へ入ると、室内の上座に面接官が三人座っていた。
「藤宮学園大学付属高等学校、御園生翠葉です」
「お座りください」
「失礼します」
部屋の中央にポツンと置かれた椅子に浅く腰掛け背筋を伸ばす。
訊かれたことに素直に答えればいいだけ、訊かれたことに素直に答えればいいだけ……。
心の中で繰り返し唱えていると、
「御園生さんは去年の時点で四大へもエントリーシートを出していましたよね? それで短大のAO入試に切り替えた理由はどういったものだったのでしょう?」
「講師の異動がなければ四大を受けていたと思います。ですが、今年度の講師の異動情報を目にして短大へ変えました」
「講師の異動、ですか……?」
「はい。私は器楽科のピアノコースを選択していますが、副科ではハープを選択する予定です。その際には加賀見正司先生のレッスンを受けたくて、進路を変更いたしました」
「四大ならほかのハープ講師もいたでしょう?」
「はい。ですが……私が学びたいのはグランドハープではなくアイリッシュハープです。その場合、第一人者と言われる加賀見先生のレッスンを受けたかったので、短期大学に照準を変えました」
「……御園生さんはピアノを勉強したいんですか? それともハープを勉強したいんですか?」
「……? 両方です」
「両方……?」
「はい、両方です。ピアノもハープも選べないくらい大好きな楽器なので」
「そうでしたか。譲れない楽器が複数あることは幸せなことですね。……ですが、四大と短大では勉強できる時間や内容量に大きな差がありますよ?」
「はい。ですから、短大での二年間が終わったら四大への編入試験を受けられるよう、できるだけ好成績を維持できるように努力していくつもりです。主科であろうと副科であろうと、手を抜くつもりはまったくありません」
「……いやはや、ハングリー精神旺盛でいいですね。ところで、御園生さんは今までコンクールというコンクールには出ていないようですが、これからも出るつもりはないのでしょうか?」
「今のところ、その予定はありません」
「それはどうしてですか?」
「コンクール自体に興味がないのと、人から受ける評価が苦手だからです」
「ですが、コンクールで入賞すれば奏者としての道も開けますし、指導者の道へ進むにしても箔がつきますよ?」
「実は、現時点ではどちらも考えていないんです」
「では、どうして音楽学校を受験しようと思ったのですか?」
「興味のある分野を突き詰めて勉強したいと思ったからです。将来、何になるかは勉強しながら考える予定です。……ただひとつ、気になる職業はあって……」
「ほお。それは?」
「音楽療法士です」
「その場合ですと、編入試験ではなく、四大に入りなおすことになりますが」
「はい、わかっています。そのときはそのときで考えようと思います」
「そうですか。高校では生徒会に所属しているようですね?」
「はい、会計を担当しています」
「遣り甲斐のある仕事ですか?」
「はいっ! とっても遣り甲斐があります。藤宮は勉強以外のイベントにも全力投球の学校なので、どんなイベントを準備するのも開催するのもとっても楽しいんです!」
「そうですか。高校では生徒会の活動をメインでがんばってこられたんですか?」
「生徒会にも力を入れて取り組みはしましたが、部活動も楽しかったです。今まで人をとりまとめる役職に就くことはありませんでしたが、三年生は私しかいなくて、部長という役職に就いたことでいくらか自分を成長させることができたと思います」
「部活は……写真部ですね」
「はいっ! 三年通して写真部で、何度かコンクールにも参加しましたが、今年ようやく入選することができました」
「写真のコンクールには参加されるんですか?」
「はい。最初はやっぱり興味はなかったのですが、コンクールに参加するのが部の方針で……。それに写真とピアノは違いますから」
「どのように違うのでしょう?」
「これは私の経験からくるものなのですが、今まで一度もコンクールに参加したことがないわけではないんです。ただ、そのとき師事していた先生が私の評価が自分の評価につながるとおっしゃる方で、それがプレッシャーになって苦手意識を抱くようになってしまったんです」
「そうでしたか……。それは災難でしたね。今日の実技試験は大丈夫でしたか?」
「今日はいつもどおりに演奏できたと思います」
「今日も評価される場だったのに?」
「先生が――今、教えてくださっている先生が暗示をかけてくださって」
「暗示、ですか?」
「はい。私は表現者で、表現したいことがあるからステージに立つのだと……。そう思って弾くことで、試験官はギャラリーに思えました」
「そうでしたか。えー……学業成績もとても良いようですが、ご自分の長所と短所を教えてください」
「短所はネガティブなところです。何をするにしても最悪の状況から考えて始めてしまうのが短所ではあるのですが、それがあるからリスクマネジメントもできる感じで、結局は短所が長所にもなってもいるのだと思います。あとは集中力にだけは自信があります」
「わかりました。では、面接は以上です」
「本日は私のために時間を割いてくださりありがとうございました」
私は深くお辞儀をして退室した。
ああああああああああ……訊かれると思ったからあらかじめ用意してきた答えに関する質問ばかりでよかったけど、素直に答えてよかったのかなあああああ……。
早くも廊下で頭を抱えて蹲りたい心境だ。
大学からしてみたら、コンクールに出て賞を取ってきてくれる生徒のほうがいいのだろうし、専門分野を学ぶにしてもその先の進路を考えてないとかやっぱりなしだったかなあ……。
考えれば考えるほどにナーバスになる。
でも、どれだけ考えてもそれ以上の回答を見つけることができなかったから、あの返答だったのだ。
生徒会や部活動が楽しかったことよりも、何を学べたか、どう成長できたかを詳しく話すべきだっただろうか。
でも、今となっては後の祭りだ。
もうあとは吉と出ようが凶と出ようが諦めよう。やれることはやった……。
もし今回の受験で不合格だったら、そのときはそのときでもう少し面接に対するあれこれを、今日の受け答えと相違ない形で練り直すことにしよう。
私はひとつ深呼吸をすると、試験会場をあとにした。
そのあと向かうは、大学敷地内にある仙波楽器出張所である。
今日は先生がそこで待ってくれている。
一階のショップで先生への取次ぎを申し出ると、レジの女性が内線をかけ三階の第一応接室へと案内してくれた。
重みのあるドアを押し開けると、
「おかえりなさい。どうでした?」
「演奏はそこそこ弾けたと思うんです。小論文もソルフェも問題ないとは思うんですけど面接があああ……」
私はようやく頭を抱えてその場に蹲ることができた。
「あぁ、将来のことやコンクールのあたりを突っ込まれたふうですね」
コクコク頷くと、
「ですが、向上心についてはしっかり主張してきたのでしょう?」
私はバッと顔を上げ、
「それはもう、ここぞとばかりに」
「ならばトントンですかね。それと試験でそこそこ点数が取れていれば深刻視するほどではないでしょう。ひとまずハーブティーをどうぞ」
この香りはカモミールティー。
以前来たときにはなかったノンカフェインのお茶が用意されていたことがなんとなく嬉しい。
私は遠慮せずにお茶をいただいた。
「明日からのレッスンはいかがなさいますか?」
「とっても不安なので、合否が出るまでは続けたくて……。先生のご都合はいかがですか?」
「先月と今月は御園生さんのレッスンだけでだいぶ稼がせてもらってますからね。日曜日に天川ミュージックのレッスンが午後から三件入ってるだけですよ。それも夕方には終わりますから、ご入用でしたら夜のレッスンは可能です」
「拘束時間が長くて大変申し訳ないのですが、もうしばらくお付き合いくださいっ」
私はペコリと頭を下げ、レッスン時間の確保をお願いをした。
「ですが、土曜日といったら合格発表の日ですよね?」
「あ……そう言われてみれば」
「合格発表はここまで見に来るんですか?」
「その予定です」
「でしたら、帰りに天川ミュージックスクールへ寄ってください。そこで結果をうかがいます。そのときに今後のレッスン日の相談をすればいいでしょう。場合によってはそのあとに藤倉のマンションへ移動してレッスンという感じで」
「わかりました」
「今日はどうしますか?」
「今日だけはお休みいただいてもいいでしょうか……? もう精神的にボロボロで……」
先生はクスリと笑い、
「では、今日はゆっくり休んで、また明日からのレッスンとしましょう。時間は今までと同じでかまいませんか?」
「はいっ!」
本当は自分で電車とバスを乗り継いで行くつもりだったのだけど、今回の受験で合格できなかった場合、次の受験まで日がないわけで、うっかり公共の乗り物で風邪をもらったら困るから、という理由で警護班に送られることになったのだ。
「ご健闘をお祈りしております」と送り出され、緊張のままに足を踏み出す。
最初に楽典、小論文の試験があり、次が新曲視唱の試験。次が実技試験で、最後に面接という運びだった。
小論文も楽典も問題なくスタートを切れたけれど、新曲視唱では緊張から喉が開かず小さな声でしか歌うことができなかった。でも先生に、「音程とリズム、拍子さえきっちりと取れていればクリアです。声の大きさはあまり気にしないように」と言われていたこともあり、あまり引き摺ることなくピアノの実技試験へシフトできた。
「評価」される場で弾くのは本当に苦手なのだけど、演奏時に試験官が目に入らない程度の距離感があり、先生に「そこら辺にいるギャラリーだと思えばいい」と言わたことを思い出して、そのつもりで弾いたら意外と普段どおりに弾けた気がしなくもない。
自分は表現者――自分が表現したいままに弾く。
それを行ったところ、目立つミスもなく弾ききることができたのだ。
残すところは面接だ。
ある程度、受け答えの練習は仙波先生とも学校の先生ともしてきた。でも、実際に何を訊かれるかは蓋を開けてみなくてはわからない。
今日一番の緊張を伴いながら面接室へ入ると、室内の上座に面接官が三人座っていた。
「藤宮学園大学付属高等学校、御園生翠葉です」
「お座りください」
「失礼します」
部屋の中央にポツンと置かれた椅子に浅く腰掛け背筋を伸ばす。
訊かれたことに素直に答えればいいだけ、訊かれたことに素直に答えればいいだけ……。
心の中で繰り返し唱えていると、
「御園生さんは去年の時点で四大へもエントリーシートを出していましたよね? それで短大のAO入試に切り替えた理由はどういったものだったのでしょう?」
「講師の異動がなければ四大を受けていたと思います。ですが、今年度の講師の異動情報を目にして短大へ変えました」
「講師の異動、ですか……?」
「はい。私は器楽科のピアノコースを選択していますが、副科ではハープを選択する予定です。その際には加賀見正司先生のレッスンを受けたくて、進路を変更いたしました」
「四大ならほかのハープ講師もいたでしょう?」
「はい。ですが……私が学びたいのはグランドハープではなくアイリッシュハープです。その場合、第一人者と言われる加賀見先生のレッスンを受けたかったので、短期大学に照準を変えました」
「……御園生さんはピアノを勉強したいんですか? それともハープを勉強したいんですか?」
「……? 両方です」
「両方……?」
「はい、両方です。ピアノもハープも選べないくらい大好きな楽器なので」
「そうでしたか。譲れない楽器が複数あることは幸せなことですね。……ですが、四大と短大では勉強できる時間や内容量に大きな差がありますよ?」
「はい。ですから、短大での二年間が終わったら四大への編入試験を受けられるよう、できるだけ好成績を維持できるように努力していくつもりです。主科であろうと副科であろうと、手を抜くつもりはまったくありません」
「……いやはや、ハングリー精神旺盛でいいですね。ところで、御園生さんは今までコンクールというコンクールには出ていないようですが、これからも出るつもりはないのでしょうか?」
「今のところ、その予定はありません」
「それはどうしてですか?」
「コンクール自体に興味がないのと、人から受ける評価が苦手だからです」
「ですが、コンクールで入賞すれば奏者としての道も開けますし、指導者の道へ進むにしても箔がつきますよ?」
「実は、現時点ではどちらも考えていないんです」
「では、どうして音楽学校を受験しようと思ったのですか?」
「興味のある分野を突き詰めて勉強したいと思ったからです。将来、何になるかは勉強しながら考える予定です。……ただひとつ、気になる職業はあって……」
「ほお。それは?」
「音楽療法士です」
「その場合ですと、編入試験ではなく、四大に入りなおすことになりますが」
「はい、わかっています。そのときはそのときで考えようと思います」
「そうですか。高校では生徒会に所属しているようですね?」
「はい、会計を担当しています」
「遣り甲斐のある仕事ですか?」
「はいっ! とっても遣り甲斐があります。藤宮は勉強以外のイベントにも全力投球の学校なので、どんなイベントを準備するのも開催するのもとっても楽しいんです!」
「そうですか。高校では生徒会の活動をメインでがんばってこられたんですか?」
「生徒会にも力を入れて取り組みはしましたが、部活動も楽しかったです。今まで人をとりまとめる役職に就くことはありませんでしたが、三年生は私しかいなくて、部長という役職に就いたことでいくらか自分を成長させることができたと思います」
「部活は……写真部ですね」
「はいっ! 三年通して写真部で、何度かコンクールにも参加しましたが、今年ようやく入選することができました」
「写真のコンクールには参加されるんですか?」
「はい。最初はやっぱり興味はなかったのですが、コンクールに参加するのが部の方針で……。それに写真とピアノは違いますから」
「どのように違うのでしょう?」
「これは私の経験からくるものなのですが、今まで一度もコンクールに参加したことがないわけではないんです。ただ、そのとき師事していた先生が私の評価が自分の評価につながるとおっしゃる方で、それがプレッシャーになって苦手意識を抱くようになってしまったんです」
「そうでしたか……。それは災難でしたね。今日の実技試験は大丈夫でしたか?」
「今日はいつもどおりに演奏できたと思います」
「今日も評価される場だったのに?」
「先生が――今、教えてくださっている先生が暗示をかけてくださって」
「暗示、ですか?」
「はい。私は表現者で、表現したいことがあるからステージに立つのだと……。そう思って弾くことで、試験官はギャラリーに思えました」
「そうでしたか。えー……学業成績もとても良いようですが、ご自分の長所と短所を教えてください」
「短所はネガティブなところです。何をするにしても最悪の状況から考えて始めてしまうのが短所ではあるのですが、それがあるからリスクマネジメントもできる感じで、結局は短所が長所にもなってもいるのだと思います。あとは集中力にだけは自信があります」
「わかりました。では、面接は以上です」
「本日は私のために時間を割いてくださりありがとうございました」
私は深くお辞儀をして退室した。
ああああああああああ……訊かれると思ったからあらかじめ用意してきた答えに関する質問ばかりでよかったけど、素直に答えてよかったのかなあああああ……。
早くも廊下で頭を抱えて蹲りたい心境だ。
大学からしてみたら、コンクールに出て賞を取ってきてくれる生徒のほうがいいのだろうし、専門分野を学ぶにしてもその先の進路を考えてないとかやっぱりなしだったかなあ……。
考えれば考えるほどにナーバスになる。
でも、どれだけ考えてもそれ以上の回答を見つけることができなかったから、あの返答だったのだ。
生徒会や部活動が楽しかったことよりも、何を学べたか、どう成長できたかを詳しく話すべきだっただろうか。
でも、今となっては後の祭りだ。
もうあとは吉と出ようが凶と出ようが諦めよう。やれることはやった……。
もし今回の受験で不合格だったら、そのときはそのときでもう少し面接に対するあれこれを、今日の受け答えと相違ない形で練り直すことにしよう。
私はひとつ深呼吸をすると、試験会場をあとにした。
そのあと向かうは、大学敷地内にある仙波楽器出張所である。
今日は先生がそこで待ってくれている。
一階のショップで先生への取次ぎを申し出ると、レジの女性が内線をかけ三階の第一応接室へと案内してくれた。
重みのあるドアを押し開けると、
「おかえりなさい。どうでした?」
「演奏はそこそこ弾けたと思うんです。小論文もソルフェも問題ないとは思うんですけど面接があああ……」
私はようやく頭を抱えてその場に蹲ることができた。
「あぁ、将来のことやコンクールのあたりを突っ込まれたふうですね」
コクコク頷くと、
「ですが、向上心についてはしっかり主張してきたのでしょう?」
私はバッと顔を上げ、
「それはもう、ここぞとばかりに」
「ならばトントンですかね。それと試験でそこそこ点数が取れていれば深刻視するほどではないでしょう。ひとまずハーブティーをどうぞ」
この香りはカモミールティー。
以前来たときにはなかったノンカフェインのお茶が用意されていたことがなんとなく嬉しい。
私は遠慮せずにお茶をいただいた。
「明日からのレッスンはいかがなさいますか?」
「とっても不安なので、合否が出るまでは続けたくて……。先生のご都合はいかがですか?」
「先月と今月は御園生さんのレッスンだけでだいぶ稼がせてもらってますからね。日曜日に天川ミュージックのレッスンが午後から三件入ってるだけですよ。それも夕方には終わりますから、ご入用でしたら夜のレッスンは可能です」
「拘束時間が長くて大変申し訳ないのですが、もうしばらくお付き合いくださいっ」
私はペコリと頭を下げ、レッスン時間の確保をお願いをした。
「ですが、土曜日といったら合格発表の日ですよね?」
「あ……そう言われてみれば」
「合格発表はここまで見に来るんですか?」
「その予定です」
「でしたら、帰りに天川ミュージックスクールへ寄ってください。そこで結果をうかがいます。そのときに今後のレッスン日の相談をすればいいでしょう。場合によってはそのあとに藤倉のマンションへ移動してレッスンという感じで」
「わかりました」
「今日はどうしますか?」
「今日だけはお休みいただいてもいいでしょうか……? もう精神的にボロボロで……」
先生はクスリと笑い、
「では、今日はゆっくり休んで、また明日からのレッスンとしましょう。時間は今までと同じでかまいませんか?」
「はいっ!」