光のもとでⅡ+
Side 翠葉 11話
お風呂から上がるのも順番に。
先にツカサがバスタブから上がり、シャワーを浴びてバスルームを出たところで私がバスタブを出てシャワーを浴びる。
コックを捻って脱衣所に出ようとしたとき、ドア越しにツカサが立っているのがわかった。
それも、身体を拭いていてとか、バスローブを着ていて、という作業途中ではなく、完全にこちらを向いた状態で立っているのが曇りガラス越しにわかる。
「あの……なんでいるの?」
出られないのだけど……。
「もちろん、翠を迎えるため?」
「リビングで待っててくれて大丈夫っ」
そこまで言えば脱衣所から出ていってくれると思っていたのは私。全然その気がなかったのはツカサ。
次の瞬間にはバスルームのドアが開けられ、
「いい加減観念しろ」
とバスローブに包まれた。
ツカサは手際よく前を合わせると、付属のベルトをリボン結びするところまでしてくれる。
呆気に取られていると、
「バスタブで手ぇ出さなかったの、褒められてしかるべきだと思うんだけどっ?」
言われて気づく。
まるでリビングで話しているような雰囲気を作ってくれていたのはツカサで、そのツカサは我慢を強いられていたのだと。
「ごめん、なさい……?」
ツカサの顔を見ながら口にすると、ツカサは不本意そうな顔をしていた。
あれ? 言葉、間違えた……?
「あり、がとう……?」
小さな声で言い直すと、
「どういたしまして」
そう言ったあと、ツカサは私の頭をまじまじと見てはため息をついた。
このため息はなんのため息だろう……。
「ツカサ……?」
「……このままベッドルームに連れ込みたいところだけど、さすがにその頭を放置してベッドルームへ連れ込むわけにはいかない」
あ、そういう意味……。
「タオルドライしたらドライヤーで即行乾かす」
ツカサはくるっと進行方向を変え洗面所でドライヤーとタオルを調達すると、先陣を切るように洗面所を出て行った。
その後ろ姿を呆然と見送っていると、
「翠、早く」
鋭い口調で急かされる。
慌てて洗面所から出ると、ツカサはドライヤーのコードをコンセントにつないでいて、ソファに座るように言われた。
私は促されるままソファへ腰を下ろしたわけだけど、バスローブの中はショーツもブラもつけていないうえ、自分のサイズより若干大きなバスローブを羽織っているともなれば、心を占めるのは多大な心許なさ……。
そんな自分をどうにか落ち着けようと正座をすると、頭上で留めていたクリップを外され、ツカサは目の粗いコームで丁寧に髪を梳かし始めた。
それが終わるとタオルでポンポンと叩いて余分な水分を拭き取ってくれる。
少し前まではとても急いていたのに、今はそんな感じを微塵も見せない。
手馴れているなぁ、などと感心していたら、今度はドライヤーの音が鳴り出して、温風が頭に当てられた。
「熱くない?」
「大丈夫……」
「熱くなったら言って」
「はい……」
ツカサは要領を得た人のそれで髪を乾かしていく。
まずは頭皮を乾かし、徐々に毛先の方へと温風をずらしていく。
「慣れてるのね……?」
「姉さんの髪、やらされることがあったから」
その言葉から力関係がうかがえて、思わず笑みが漏れる。
そういえば、湊先生の高校生のころの写真を栞さんに見せてもらったことがある。
とても艶やかで、きれいなロングヘアだった。
「好戦的」という言葉が相応しい目元や表情は今と変わらず、それでも恵まれた容姿にロングヘアというそれは、生粋のお嬢様にしか見えなかった。
髪を下ろしている写真とポニーテールの写真が半々くらいで、ほとんどの写真がメガネをかけていない写真だったけれど、一枚だけポニーテールでメガネをかけてる写真があって、その写真を見たとき、「ツカサが女装したらこんな感じかな?」と思ったことは内緒だ。
「湊先生、いつごろ髪の毛を切ったの?」
「……確か二十歳過ぎくらい」
「何かきっかけがあったとか?」
腰までのロングヘアを一気にショートにしたと聞いたけれど、どうしたらそんな思い切ったことができるのだろう。私なら、何かきっかけがないと無理。
そんな思いでたずねたら、思いもよらない言葉が返ってきた。
「毎日のようにくる縁談に痺れを切らして、親戚縁者の前で花切り鋏でバッサリと」
「は、花切り鋏っ!?」
豪胆なところがあるなとは思っていたけれど、それは若いときからでしたか、そうでしたか……。
「自分は藤宮の道具じゃないし、医大生の貴重な時間を縁談なんかに費やす道理はないとか啖呵を切った結果、じーさんに静さんとの婚約を突きつけられたわけだけど……」
「え? どうして……?」
「静さんも静さんで縁談断りまくってて、碧さん以外の人間を見ようとしなかった問題児だからじゃない? 姉さんが三十になるまでに静さんが誰とも結婚しておらず、姉さんに特定の相手がいない場合、姉さんの誕生日に式を挙げるってところまで決められてた」
その説明に少し疑問に思う。
「……ふたりが婚約状態にあったのって、栞さんも知らなかったし、海斗くんも知らなかったよね? 楓先生も秋斗さんも知らなかったって聞いているのだけど、ツカサは知っていたの?」
「それ、姉さんにも訊かれたけど、ほぼほぼ確信犯がひとりいたのと、危機管理が甘すぎるバカな姉だったから、知りたくもないのに知っちゃった感じ」
「どういうこと?」
「じーさん、ふたりを婚約させたときに約束させたらしい。婚約者同士がまったく顔を合わせないのもあれだから、月に一度はふたりで食事をするように、って」
それが何……?
「姉さん、酒弱いだろ?」
「うん……」
「その姉さんに酒を飲ませるのが静さんで、食事の帰りは決まって静さんが姉さんを送ってきてた。しかも、俺がマンションにいる日を狙って」
それってつまり――
「静さんは俺に隠すつもりがさらさらなかった人。姉さんはベロンベロンに酔うと口が軽くなる。とくに自分の家だと拍車をかけて」
あ……確信犯がひとりと危機管理が甘すぎる人がひとり……。
思わず笑ってしまう。
「元おじい様も元おじい様だけど、静さんも静さんだし、湊先生も湊先生よね?」
「本当に。あれでどうして秘密が守れていると思えたのかが謎でしかない」
ツカサは心底呆れたように話す。
そんな様がおかしくて、私はやっぱりクスクスと笑うのだ。
それにしても、人に髪の毛を乾かしてもらうというのはどうしてこんなにも気持ちがいいのか。
ツカサのそれは、蒼兄や唯兄よりも丁寧で、まるで美容院で美容師さんにされているかのごとくだ。
膝を崩してソファにもたれかかると、ピタ、とドライヤーの音が止んだ。
不思議に思って見上げると、
「そのまま寝たらただじゃおかない」
真顔のツカサから本気の脅迫を受ける。
「ね、寝たりしないものっ!」
「どうだか……」
疑いの眼差しに耐え切れず、早々にカミングアウト。
「……だって、ツカサ、髪の毛乾かすのとっても上手なんだもの。美容師さんにだってなれそうよ?」
「なるつもりはないけれど、翠限定で専属髪乾かし師ならやらなくもない」
「それ……多大な見返りを求められそうだから遠慮しておくね?」
そんなふうに返すと、「ちっ」と舌打ちをして最後の仕上げに送風を髪全体に回しかけてくれた。
「粗熱も取れましたが、仕上がりにご不満でも?」
ずいぶん上から目線な髪乾かし師さんだな、と思いながら、私はさらさらの髪の毛に手櫛を通し、
「星五つ! とっても満足な仕上がりです!」
「それは何より」
ツカサは手早くドライヤーを片付けると、ソファに座る私に腕を伸ばしてきた。
「ん?」
「そのまま俺の首に腕回して」
「首? 腕?」
意味もわからずツカサの首へ腕を回した直後、私は軽々と抱き上げられ、寝室へと連行された。
ベッドルームの照明は点いていない。けれど、間接照明が点いたままのリビングから、曇りガラスを通してオレンジ色の柔らかな光りが届き、室内を問題なく見渡せる環境。
そんな中、ベッドへ下ろされるとツカサの手が左腰へと伸びてきて、一瞬でバスローブのベルトを解かれた。
「ツカサっ、バイタルの設定っ――」
ツカサは面倒くさそうに右手を伸ばし、枕元に置かれたスマホを手に取った。そして、無言でスマホを渡される。
えぇと……これは「見ろ」ということだろうか。それとも、「設定しろ」……?
……否――リビングにあったはずのものがここにあるのだから、「確認しろ」が正しい気がする。
私はツカサからスマホへ視線を移し、ディスプレイにそっと触れる。と、普段の表示とは異なる表示が待ち受けていた。
上段に平常時の数値が表示され、下段にはリアルタイムの数値が表示されている。
つまり、すでに設定を変えてあるということ。
そのスマホが枕元に置いてあったのは、エッチの最中に私のバイタルを確認するためだろう。
ちょっと色々恥ずかしくなってディスプレイから目を離せずにいると、
「問題がないってわかったなら俺に意識戻して欲しいんだけど」
そう言って、ツカサにスマホを取り上げられた。
「用意周到すぎ……」
恥ずかしさを隠すように少しの不満を訴えると、
「心外だ。この設定がされてなかったら翠は怒るだろ?」
「それはそうなんだけ――」
文句の途中で、強引に口を塞がれた。
唇が離れても顔は至近距離。
「文句ならあとで受け付ける。もう我慢できないからいい加減、こっちに集中して」
私が答える間もなく、優しいキスが降り注いだ――
先にツカサがバスタブから上がり、シャワーを浴びてバスルームを出たところで私がバスタブを出てシャワーを浴びる。
コックを捻って脱衣所に出ようとしたとき、ドア越しにツカサが立っているのがわかった。
それも、身体を拭いていてとか、バスローブを着ていて、という作業途中ではなく、完全にこちらを向いた状態で立っているのが曇りガラス越しにわかる。
「あの……なんでいるの?」
出られないのだけど……。
「もちろん、翠を迎えるため?」
「リビングで待っててくれて大丈夫っ」
そこまで言えば脱衣所から出ていってくれると思っていたのは私。全然その気がなかったのはツカサ。
次の瞬間にはバスルームのドアが開けられ、
「いい加減観念しろ」
とバスローブに包まれた。
ツカサは手際よく前を合わせると、付属のベルトをリボン結びするところまでしてくれる。
呆気に取られていると、
「バスタブで手ぇ出さなかったの、褒められてしかるべきだと思うんだけどっ?」
言われて気づく。
まるでリビングで話しているような雰囲気を作ってくれていたのはツカサで、そのツカサは我慢を強いられていたのだと。
「ごめん、なさい……?」
ツカサの顔を見ながら口にすると、ツカサは不本意そうな顔をしていた。
あれ? 言葉、間違えた……?
「あり、がとう……?」
小さな声で言い直すと、
「どういたしまして」
そう言ったあと、ツカサは私の頭をまじまじと見てはため息をついた。
このため息はなんのため息だろう……。
「ツカサ……?」
「……このままベッドルームに連れ込みたいところだけど、さすがにその頭を放置してベッドルームへ連れ込むわけにはいかない」
あ、そういう意味……。
「タオルドライしたらドライヤーで即行乾かす」
ツカサはくるっと進行方向を変え洗面所でドライヤーとタオルを調達すると、先陣を切るように洗面所を出て行った。
その後ろ姿を呆然と見送っていると、
「翠、早く」
鋭い口調で急かされる。
慌てて洗面所から出ると、ツカサはドライヤーのコードをコンセントにつないでいて、ソファに座るように言われた。
私は促されるままソファへ腰を下ろしたわけだけど、バスローブの中はショーツもブラもつけていないうえ、自分のサイズより若干大きなバスローブを羽織っているともなれば、心を占めるのは多大な心許なさ……。
そんな自分をどうにか落ち着けようと正座をすると、頭上で留めていたクリップを外され、ツカサは目の粗いコームで丁寧に髪を梳かし始めた。
それが終わるとタオルでポンポンと叩いて余分な水分を拭き取ってくれる。
少し前まではとても急いていたのに、今はそんな感じを微塵も見せない。
手馴れているなぁ、などと感心していたら、今度はドライヤーの音が鳴り出して、温風が頭に当てられた。
「熱くない?」
「大丈夫……」
「熱くなったら言って」
「はい……」
ツカサは要領を得た人のそれで髪を乾かしていく。
まずは頭皮を乾かし、徐々に毛先の方へと温風をずらしていく。
「慣れてるのね……?」
「姉さんの髪、やらされることがあったから」
その言葉から力関係がうかがえて、思わず笑みが漏れる。
そういえば、湊先生の高校生のころの写真を栞さんに見せてもらったことがある。
とても艶やかで、きれいなロングヘアだった。
「好戦的」という言葉が相応しい目元や表情は今と変わらず、それでも恵まれた容姿にロングヘアというそれは、生粋のお嬢様にしか見えなかった。
髪を下ろしている写真とポニーテールの写真が半々くらいで、ほとんどの写真がメガネをかけていない写真だったけれど、一枚だけポニーテールでメガネをかけてる写真があって、その写真を見たとき、「ツカサが女装したらこんな感じかな?」と思ったことは内緒だ。
「湊先生、いつごろ髪の毛を切ったの?」
「……確か二十歳過ぎくらい」
「何かきっかけがあったとか?」
腰までのロングヘアを一気にショートにしたと聞いたけれど、どうしたらそんな思い切ったことができるのだろう。私なら、何かきっかけがないと無理。
そんな思いでたずねたら、思いもよらない言葉が返ってきた。
「毎日のようにくる縁談に痺れを切らして、親戚縁者の前で花切り鋏でバッサリと」
「は、花切り鋏っ!?」
豪胆なところがあるなとは思っていたけれど、それは若いときからでしたか、そうでしたか……。
「自分は藤宮の道具じゃないし、医大生の貴重な時間を縁談なんかに費やす道理はないとか啖呵を切った結果、じーさんに静さんとの婚約を突きつけられたわけだけど……」
「え? どうして……?」
「静さんも静さんで縁談断りまくってて、碧さん以外の人間を見ようとしなかった問題児だからじゃない? 姉さんが三十になるまでに静さんが誰とも結婚しておらず、姉さんに特定の相手がいない場合、姉さんの誕生日に式を挙げるってところまで決められてた」
その説明に少し疑問に思う。
「……ふたりが婚約状態にあったのって、栞さんも知らなかったし、海斗くんも知らなかったよね? 楓先生も秋斗さんも知らなかったって聞いているのだけど、ツカサは知っていたの?」
「それ、姉さんにも訊かれたけど、ほぼほぼ確信犯がひとりいたのと、危機管理が甘すぎるバカな姉だったから、知りたくもないのに知っちゃった感じ」
「どういうこと?」
「じーさん、ふたりを婚約させたときに約束させたらしい。婚約者同士がまったく顔を合わせないのもあれだから、月に一度はふたりで食事をするように、って」
それが何……?
「姉さん、酒弱いだろ?」
「うん……」
「その姉さんに酒を飲ませるのが静さんで、食事の帰りは決まって静さんが姉さんを送ってきてた。しかも、俺がマンションにいる日を狙って」
それってつまり――
「静さんは俺に隠すつもりがさらさらなかった人。姉さんはベロンベロンに酔うと口が軽くなる。とくに自分の家だと拍車をかけて」
あ……確信犯がひとりと危機管理が甘すぎる人がひとり……。
思わず笑ってしまう。
「元おじい様も元おじい様だけど、静さんも静さんだし、湊先生も湊先生よね?」
「本当に。あれでどうして秘密が守れていると思えたのかが謎でしかない」
ツカサは心底呆れたように話す。
そんな様がおかしくて、私はやっぱりクスクスと笑うのだ。
それにしても、人に髪の毛を乾かしてもらうというのはどうしてこんなにも気持ちがいいのか。
ツカサのそれは、蒼兄や唯兄よりも丁寧で、まるで美容院で美容師さんにされているかのごとくだ。
膝を崩してソファにもたれかかると、ピタ、とドライヤーの音が止んだ。
不思議に思って見上げると、
「そのまま寝たらただじゃおかない」
真顔のツカサから本気の脅迫を受ける。
「ね、寝たりしないものっ!」
「どうだか……」
疑いの眼差しに耐え切れず、早々にカミングアウト。
「……だって、ツカサ、髪の毛乾かすのとっても上手なんだもの。美容師さんにだってなれそうよ?」
「なるつもりはないけれど、翠限定で専属髪乾かし師ならやらなくもない」
「それ……多大な見返りを求められそうだから遠慮しておくね?」
そんなふうに返すと、「ちっ」と舌打ちをして最後の仕上げに送風を髪全体に回しかけてくれた。
「粗熱も取れましたが、仕上がりにご不満でも?」
ずいぶん上から目線な髪乾かし師さんだな、と思いながら、私はさらさらの髪の毛に手櫛を通し、
「星五つ! とっても満足な仕上がりです!」
「それは何より」
ツカサは手早くドライヤーを片付けると、ソファに座る私に腕を伸ばしてきた。
「ん?」
「そのまま俺の首に腕回して」
「首? 腕?」
意味もわからずツカサの首へ腕を回した直後、私は軽々と抱き上げられ、寝室へと連行された。
ベッドルームの照明は点いていない。けれど、間接照明が点いたままのリビングから、曇りガラスを通してオレンジ色の柔らかな光りが届き、室内を問題なく見渡せる環境。
そんな中、ベッドへ下ろされるとツカサの手が左腰へと伸びてきて、一瞬でバスローブのベルトを解かれた。
「ツカサっ、バイタルの設定っ――」
ツカサは面倒くさそうに右手を伸ばし、枕元に置かれたスマホを手に取った。そして、無言でスマホを渡される。
えぇと……これは「見ろ」ということだろうか。それとも、「設定しろ」……?
……否――リビングにあったはずのものがここにあるのだから、「確認しろ」が正しい気がする。
私はツカサからスマホへ視線を移し、ディスプレイにそっと触れる。と、普段の表示とは異なる表示が待ち受けていた。
上段に平常時の数値が表示され、下段にはリアルタイムの数値が表示されている。
つまり、すでに設定を変えてあるということ。
そのスマホが枕元に置いてあったのは、エッチの最中に私のバイタルを確認するためだろう。
ちょっと色々恥ずかしくなってディスプレイから目を離せずにいると、
「問題がないってわかったなら俺に意識戻して欲しいんだけど」
そう言って、ツカサにスマホを取り上げられた。
「用意周到すぎ……」
恥ずかしさを隠すように少しの不満を訴えると、
「心外だ。この設定がされてなかったら翠は怒るだろ?」
「それはそうなんだけ――」
文句の途中で、強引に口を塞がれた。
唇が離れても顔は至近距離。
「文句ならあとで受け付ける。もう我慢できないからいい加減、こっちに集中して」
私が答える間もなく、優しいキスが降り注いだ――