DEAR MY LIAR
おじちゃんの家に預けられる回数は、次第に増えていった。
それは夜のひとときだったり、朝から晩まで一日中だったりまちまち。
そのままおじちゃんの部屋に泊まることも珍しくなかった。
「おじちゃん! それなに!?」
「うわー! だめだめ、見ないで!」
わたしはそれなりに自分のことは自分でできたけれど、まだまだ危なっかしいところが多く、おじちゃんが付き添うことがほとんどだった。
当然それはお風呂にも適用される。
「え? なに? ちょっと、見えないー!」
「だから見なくていいんだって! ぎゃあああああ!! さーわーらーなーいーでーーーー!!」
一般的に娘がお父さんと何歳まで一緒にお風呂に入るのかは知らない。
けれど、わたしは娘ではなく、おじちゃんはお父さんではなかった。
また、他に家族と呼べるようなひともいなかった。
「若葉ぁ。きみ、里中先生に俺と一緒に風呂入ってるって言ったでしょ?」
「うん、言った」
「まいったなぁ。おかげでめっちゃくちゃ警戒されてるんだよ、俺。もー、どうしよ……」
三、四年生の担任だった里中先生は四十代のハツラツとした女のひとで、わたしの複雑な家庭環境をかなり心配していた。
ことあるごとに声を掛けてくれて、何かと助けてくれたのだけど、親戚でも何でもない“おじちゃん”の存在をとても不審に思っていたようなのだ。
先生からの提案で、おじちゃんとのお風呂は三年生で卒業となった。
結果として、おじちゃんは里中先生の信頼を勝ち取り、その後先生にはずいぶん助けていただいた。
女の子の成長に伴う身体の変化についても先生が教えてくれて、ひと揃い用意してくれたりもした。
小学校を卒業して十年ほど経つけれど、いまだに年賀状のやり取りは続いている。