生きろ。死にたくなかった君の号哭を、俺達は死んでも忘れない。
奈々絵は親戚どころか、知り合いの中で誰一人自分が元気になって喜ぶ人はいないと思っている。
もちろんその中には、あたしも含まれる。
奈々絵がそう考えるのには、幼い頃にあったいじめが関係しているらしい。
女みたいな名前だと言われて暴力を受けたり、親戚に言われたのと同じように、お前が死ねばよかったんだといわれたりと、かなり散々な扱いを受けたらしい。
正直、そんなにたくさん辛いことがあったら、そりゃあ自殺未遂もするし、治療がしたくもなくなるよねとは思う。
でもあたしは、それでも奈々絵に元気になって欲しい。
自殺未遂した後の奈々絵は、複雑骨折の他に拒食症なんかにもなってたから、マシになるまでアメリカで2年治療を受けていたみたいで、それ以上元気になるようにするとなると、もしかしたら23区どころか、アメリカにまた行くハメになるのかもしれない。
私では想像できないほどの苦労がそこでは待ち構えているんだと思うと、奈々絵が治療を躊躇うのもわかる。
でも、だからって奈々絵が元気じゃないのを見過ごすのも、あたしは嫌なんだ。